江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

別雲間

1~12集(大結局)

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 10か月たってから出てきた「鶴唳華亭」の番外編。続編というか補完部分というか・・・
 前作とのかかわりは、本編との長短差が極端にある点では「青雲志」も「天意」もそうなんですが、これは「青雲志」のような前作からの続きではなく、「天意」のように前作で描かれなかった(つまりカットされた)部分を描き、ドラマ全体を完成させています。

 こちらを見てからだと、この前にブログに記述した部分が全く違って見えてくるし、新たに分かった方が物語的真実なんですが、以前の記事を直すことはあえてしません。同じ画像を二回使ってたのだけ、入れ替えましたw

 さて、鶴唳華亭60集が終わったエンディングの後に現れた「おまけ」部分。これがとんでもない大きな内容を暗示していることはわかったのですが、予想以上にやってくれました。

 この12集の「別雲鶴」で物語を進めていくのは、太子蕭定権と顧才人としてその側妃の一人になっているヒロイン陸文昔。


 それに加えて、趙王蕭定楷、許昌平、顧逢恩の三人。

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まず、蕭定権の弟五大王こと趙王蕭定楷。彼は兄斉王蕭定棠の影に隠れる感じで時々ヒロインを助けるなどの場面で動きを見せたほかは、前作ではさほど目立たないキャラでした。ところが斉王が太子との争いに敗れ、降格されて任地に追放された後、自分も妃を迎えて任地に行くよう仕組まれると太子への敵愾心をむき出す。彼は太子を陥れるために母の死を利用して、服喪のために3年は大婚が行えないことで時間を作り次々と罠をはりめぐらせる。

 

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 次に、「別雲間」冒頭で正体が明らかになった許昌平。彼は現皇帝と皇位を争った当時の太子の遺腹児で、蕭定権には堂兄ということになります。彼がヒロインと共に太子のために知恵を働かせ、趙王の罠から太子を守ります。

 話違うけど、この王雨@許昌平のぴったりそろった袖口がツボでして・・・💦よく見りゃ模様まで左右でつながってるしw

 ここで初めて、太子周辺に罠をはり、毒を仕込んでいたのが、皇后の側近の姜尚宮だということが明らかになる。彼女の仕業を知り、太子のために動いていたのが、皇帝側近の大監陳謹と太子側近の大監王慎という後宮側仕えネットワークの動きがちょっと新鮮。

 ともあれ、趙王の陰謀が暴かれ、庶民に落とされて追放処分となるが、許昌平もまた朝廷から追放されてしまう。

 顧才人として太子の保護のもとにいる陸文昔が妊娠、太子感涙。太子と皇帝の関係も多少は好転、かつて太子妃と共に毒を飲まされ、陸文昔に命を助けられた六大王はかわいい弟ぶり。

 そこに長州からの知らせが届く。

 こうして、太子が外祖父顧思林の棺を迎えに長州に行きます。

 そこにいたのがすっかり皇帝や朝廷に見切りをつけた顧逢恩、李明安、長州に来ていた許昌平、亡き太子妃の天真爛漫すぎる弟張韶筠。

 

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 顧逢恩は太子を立てて、反乱を起こし、朝廷を一新させようとする。別れて3年の月日は二人にとって長すぎました。もうふざけあって遊んだいとこはどこにもいない。そして、太子も顧逢恩への疑いを持ち、その対策を講じている。
 
 顧逢恩の計略をつぶすために蕭定権が取ったのは自ら「太子を廃嫡させる」という手段。これで名目を失った顧逢恩は自死

 

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 廃太子となって都に帰った蕭定権は、陸文昔とブランコに乗ったりして穏やかなひと時を過ごすが、これが別れになります。

 蕭定権が自ら死を選んだのは、やっぱりかな~と。前作のラストが見せたようなラブラブエンディングというわけにはいくまいと思ってた。

 ここにきて初めて、孫を抱かせてくれ、お前の母親とは人が言うほど険悪だったわけじゃない、お前の誕生も待ち望んでたとか言い出す皇帝。遅いわw

 蕭定権に改めて太子の称号を遺贈し、盛大な葬儀が行われる。

 そして5年。皇帝の孫蕭琛が六大王と楽しく遊んでいるところに、皇帝が現れる。すっかり甘い祖父の顔で孫を抱く彼の姿からは、あの息子を苛め抜いた顔が見えない。そして、彼の言葉から許昌平が彼の師となっていることもわかる。

 ラストは高台から川を見下ろす蕭定権と陸文昔の前に、二羽の鶴が飛び去っていく・・・

 前作もこれが終わりに出てきたんですが、その時にはわからなかったのが、この場面は二人の死後なんですね。

 「鶴唳華亭」の最後で「可待」と出たのは、視聴者に向けてじゃなくて、「私が行くのを待っててね」だったそうで・・・あらま。

 

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 「鶴唳華亭」という題名は、元々「華亭鶴唳」という故事で「もう一度、華亭谷を飛んでいく鶴の鳴き声が聞きたい」と死に臨んだ西晋の陸機の故事から来ています。この華亭というのは上海松江県にあるそうです。
 そして、今回の「別雲間」というのは明末の夏完淳の五言律詩からとられています。この作者は反清の戦いに14歳で入り、17歳で清に捉えられ故郷から離れるときに作ったのがこの作品。雲間というのは同じ松江のことだそうです。

 この二つの題名は見事につながっているんですね。共に、不遇な人生を終えた人物に由来していて、不遇なうちに死を選んだ蕭定権の人生を暗示しているようにも思えます。

 ところが、陸文昔サイドから見るとかならずしてもそうではない。

 父や兄が殺され、彼女自身もさんざんひどい目にあっていますが、最終的には愛する人と結ばれています。そして、生まれた子どもは次の太子、皇帝という道筋が見えています。六大王は甥っ子がかわいくてならない感じですが、もし彼がいらんことやりだしたら、横には許昌平がくっついてるしw

 陸文昔は一度失った太子の妻の座を取り返しただけではなく、本来彼女の子どもが得るはずであった太子の座も取り戻し、以後の皇帝は順調にいけば彼女の陸家の血筋になります。ただ、父や兄の仇を討つだけではなく、国を奪ってしまったと言っていいくらい目いっぱいやりきっています。

 この「別雲間」だけを見ると、蕭定権と陸文昔の恋愛よりも蕭定権父子の関係が変わっていくというか父皇帝が変わっていくのをメインにしているように思えます。恋愛関係の方がすでに前作で一通りの結末がついているわけですから・・・

 皇帝や太子周辺の権力を狙って陰謀をめぐらした兄弟もその母も姿を消し、権力を思うままにふるまった李柏舟も、その後釜を狙った張陸正も処刑され、後宮で陰謀をめぐらせた姜尚宮たちも排除されて、朝廷や後宮から悪意を発散させる人物が消えて、一時の平安が来てるんでしょうか?いつまで続くか知らないけど。

 主人公とヒロインもすでに不在という終わり方ですが、不思議にやっぱりハッピーエンドのような感じがしないでもないです。