江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

天下長河 その3

20~24集

 

 ちょっと短めなんですが、ドラマ展開の区切りのいいところでひとまとめにしました。

 今回の視聴分は、何かミステリとか企業ものの足の引っ張り合いを見ているような感じ。そこに清朝ならではの満族と他の民族との軋轢が絡んできます。

 

 皇帝としての自覚も能力も十分にあってもまだ独裁者としては一人前とは言いにくい若い康煕は「なんで奴らだけが特別なんだ、漢族のくせに」とあからさまに敵意を剥きだす満人の高級官僚たちに、いら立ちを隠せない。

 

 靳輔は配下の治水に長けた人間たちと一緒に、泥まみれになって働き始める。

 

 その一方で陳潢は靳輔の指示で、他の工事現場の様子を調べるために潜入スパイをしてる。帰仁提では王登選が私腹を肥やし、手抜き工事をしていることを発見。
 堤を築くための石を減らしたり、土をごまかしたり、工員たちに配給された冬服にも金をとったりとやりたい放題。陳潢が不正に気付いたことを知って、襲撃。姿を消してしまった彼や河道府が工事で不正を働き私腹を肥やしていると訴えでる。けど、なんでも反清復明と言えばいいというもんでないわけで、陳潢が反清復明の頭目!と康煕に笑い飛ばされてます。

 

 靳輔自ら指揮する清水潭では、堤防用の青条石が簡単に割れてしまう劣悪なものだと発覚。調達を担当していた靳輔の息子靳治豫は青条石を切り出してきた白川溝村の住民たちを詰問。もみ合いになった挙句に族長を殺害してしまう。

 

 ここから殺人罪に問われた靳輔の息子を助けるために、各方面が動き出す。何しろ皇帝以下が靳輔たちが悪事を働いているわけはない、罪は罪として、その背景にある不正を暴けと思っている、逆に何でもいいから靳輔たちの首をとりたいものたちが片方にいるわけで、この駆け引きがたいそうおもしろかった。

 また高士奇が康煕の命で、事件の裏を探り、事態の収拾に乗り出します。けど、彼は手を変え品を変えて、靳輔らの苦境を救ってはいても、事態の根本を解決する力はなく、ただその場を丸く収めているだけとも言えます。
 

 ドラマも中盤、本格的に治水工事が開始され、さぞかし靳輔や陳潢は苦労が絶えない話が展開するんだろうと予想していました。確かに苦労続きなんですが、なんだか予想した方向とは違って、能無しなばかりか悪意のある上役に苦しむ有能な会社員とかなんとかの話とか真犯人を探せというミステリドラマの雰囲気になってきました。最初に同じ雰囲気を感じた「天下糧倉」とはずいぶん色合いが違ってきて、今回役人たちが「糧」と書いた紙の代わりに掲げるのは「水」より「銭」じゃないかと思っているところ。

 

 今回の靳輔は息子の死が避けられない状況に追い込まれ、それでも工事の手を抜きません。その彼が、帰仁提の手抜き工事の実態を見て、失神してしまう。
 これ、ドラマの創作なんでしょうか?土を固め、石で築いたはずの堤防が、はりぼて。なんというか跳び箱?中が空っぽ。寒さから逃れようとした工員たちはその中をねぐらにしてるというすごい絵柄。ここまですごい手抜きというのもすごい話で、素人的にはここまで中を空洞にした堤防を作る方がよほど難しそうですが・・・

 

 潜入スパイの正体がばれ、手配犯にされてしまった陳潢は于振甲が県令をしている県衙に現れる。民衆と共に飢えに苦しむ于振甲は清官ですが、民に食料を与えたいと陳潢のことばにのって官糧を奪うことまでしています。
 このマザコン気味の于振甲の中の人は蘇可。母親は大明風華で胡尚儀をやってた師悦玲。キャラの立った母子ですw

 

 高士奇は陳潢に彼の危うさを指摘、自重するように言いますが・・・次々フラグ立ててる感じです。その高士奇がうまくつくろったところも皇帝康煕はちゃんと知っていて、時にぴしりとくぎを刺し底知れない恐ろしい顔も見せてきます。

 

 今回視聴分では朝廷でのやりとりは少なかったのですが、彼らの思惑に振り回される現場の人々という構図はかわらない。明らかに私怨から靳輔の息子を死罪にしてしまおうとする刑部の役人たちに激怒する康煕とか誰もが思い通りにならない苦悩を抱えています。私腹を肥やしている阿席熙たちも処分されて退場したわけではなく、相変わらず靳輔たちの悩みの種となっています。

 と、後宮ドラマとは違った種類のどろどろを抱えたまま、この事件は一応の決着。でも、すぐにまた難題が降ってきそうです。