江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

天行健 その4

29~36集(大結局)

 

 見終わりました。

 この時代背景を扱ったドラマや映画は結構見ているのですが、中でも現実世界における時代の変わり目と旧来の武林、武侠世界の終焉を重ね合わせて描いた作品としては秀逸ではないかというのがまず第一番めの感想です。

 こういう設定で記憶に強く残っているのは甄子丹や謝霆鋒主演の「十月囲城」とか成龍作品で胡歌も出ていた「1911」でした。今回、この作品が軽くその上に個人的ランクインしてしまいました。

 

 以下、どうしても中身に触れずに言いたいことが言えないので、未見の方はこの先立ち入り自己責任でお願いします。

 

 

 

 最初から、主役は秦俊杰の演じる門三刀こと伊尔根覚羅穆青、劉宇寧の天下第一剣と呼ばれる卓不凡に加えて、演員表的には扱いの小さい龐瀚辰の王家洛だと見ていました。大結局まで見終えてもその感想は変わっていません。

 

 彼ら三人はそれぞれが人並み以上の武術を極めています。でも、朝廷の高官、江湖の武芸者、県衙の小役人という彼らの身分以上に、彼らが内心に抱いている思想とか感情というものが大きく違うのが最後近くになってどんどん明らかになっていきます。


 穆青はかつて光緒帝の側近として戊戌の変法に関わり、二度と牢から出ることはないと思われていた。思いがけず、牢から出され、浄壇光蔵を探す役割を与えられた、朝廷のそこそこの高官。
 卓不凡は実は南少林にも浄壇光蔵の財宝にも関わりなく、師父が遺した斜陽の融天剣派を天下一の存在にするために浄壇光蔵に隠されているという南少林の秘伝書を求めている武芸者。
 最後の王家洛は、科挙さえ実施されていれば立身の道も開けたかもしれないのに、先に希望の持てない大沽県県衙の捕快となり、捕快の身分を示す腰牌を後生大事に持ち続け、ただひたすらに清の法の執行官であろうとしている。

 

 浄壇光蔵の場所を知るためには、三人が手に入れた南少林の達磨、戒律、菩提の三つの封印だけでなく般若堂の封印が必要ということで、それぞれの勢力がその秘密を知る謎の人物の出現を待っている。

 

 また街中で大勢がにらみ合う緊張感あふれる場面ですが、三人はここで「お茶会」を開いて、談合しています。結構和気あいあいなんですけどね~仲良く手合わせをした後、剣や刀を研ぐ卓不凡と穆青、彼らの砥石に水を注いでやる王家洛とかこんなところで笑いを持ってくる脚本が好ましいです。敵対しながらも、どこかわかりあっている感じがよく伝わってきました。

 ほほえましさが感じられたのはここまで。ここから一気に話は悲劇の様相を見せてきます。彼らとその周辺の人々に訪れた物語の週末は、自らが時代の変化を受け入れたかどうかに関係なく、彼らの上に降りかかってきた時代の変化の象徴のような感じがします。

 

 王家洛は、愚直なまでに法を守り、融天剣派一行を追いつつづけ、北洋軍閥の力を借りても、淇親王の力を借りても、大沽県の捕快であり続けます。まさに「鉄面無私」に法を執行し続けた彼の行きつくところは、愛した林安静が日本軍のスパイであったという正体を知って、彼女を殺害することでした。
 自らに変化を許さず、清という国への忠誠に凝り固まった挙句に自縄自縛に陥り、自己を失くして悲劇へとドラマを導いていくのが王家洛なんですね。


 林安静を刺殺して以後の王家洛の土気色の顔、すさまじい形相で卓不凡を追い、穆青の前に現れたのは清帝国の生霊のようでもありました。この時点ではまだ、滅びてないですけど・・・

 

 卓不凡は、大師兄だけでなく一門の師弟たちから裏切られ、武芸者でありつづける意味を見失って、 剣を捨てて霍芩と共に隠棲をしようと去って行く。そこを取り囲んだのが王家洛率いる北洋軍。二人の最期が銃によるものであったことに、もはや武芸者が腕を磨き天下に君臨する時代が終わったことの象徴にも見えます。

 それは穆青が報復のために使ったのが、剣や刀ではなくそれまで使い方も知らなかった銃であることにも感じられます。穆青は変化を躊躇なく受け入れ、過去に決別した烏蘭珊と共に新しい生き方を選びます。

 

 こうして多くの死を生贄にして、浄壇光蔵の財宝は日の目を見ます。財宝は、喜びもドラマ的な高揚もなく淡々と運び出されていきます。そういえば、そこにあったはずの南少林の武芸書はどうなったんでしょうね?

 

 ドラマ以後には、武昌蜂起へとつながっていく終わり方ですが、ここからはもう武芸者の出番はなさそうです。
 今、同時進行で見ている「射鵰英雄伝」の時代では郭靖たち武芸者が歴史の中で活躍させる余地がありましたが、このドラマではもうそういう余地は残っていないのかもしれません。穆青たちの活躍は旧来の武林の最後の輝きだったのかもと思うと、映画の「十月囲城」をちょっと思い出しました。

 

 まあ、真の主役は時代そのものなんでしょうね・・・

 

 演員的には男主陣にも、彼らと同じくらい自分自身の信念や生き方を貫いた女性たちを演じた女主陣にも文句ないし、脇を固めているベテラン組や、ゲスト的に登場してくるメンバーがそれぞれドラマのポイントポイントでいいところ持っていく感じで好ましかったです。

 

 何という終わり方するんだ!憤怒~という書き込みも中華サイトで見かけましたが、私的にはこのドラマ的にはそうなるだろうなと納得できました。

 ということで、十分物語を堪能できて満足です。

 

演 員     角 色
秦俊杰  飾  伊尔根觉罗·穆青
刘宇宁  飾  卓不凡
黄梦莹  飾  乌兰珊
庞瀚辰  飾  王家洛
傅 菁  飾  霍芩
天明  飾  林浩瀚
陈思澈  飾  林安静
黄昊月  飾  柳琳
陶珞依  飾  清伊信风
李立群  飾  存清
刘佩琦  飾  淇亲王
范 明  飾  捕快
洪剑涛  飾  县令
尹 正  飾  光绪
黄海冰  飾  程昱
何中华  飾  老林
乔振宇  飾  莫堃
胡耘豪  飾  钟海潮
李则慧  飾  野上寒
邹敦明  飾  于焕杰
威力斯  飾  格泰
孙伟豪  飾  丁羽
宗峰岩  飾  谭先
师小红  飾  姜恨
周晓鸥  飾  渡厄
张铭恩  飾  吴双宝
唐启荣  飾  赵福
谭 泉  飾  唐雨
晋 松  飾  黄屠
杜玉明  飾  钱七
杜奕衡  飾  张三疯
郭秋成  飾  舒穆禄·察泰
李大强  飾  守灵老者
袁祥仁  飾  秦捕头
房小墨  飾  小方丈
李沐宸  飾  带娣

出品人    孙忠怀、白一骢
制作人    李尔云、蔡佳
监 制    王娟、白一骢
导 演    楼健、卫立洲、刘松锋
编 剧    白一骢
摄 影    李博、彭文俊
配 乐    刘晔
艺术指导    潘跃军
美术设计    刘勇奇(美术指导)
动作指导    谷石军、辛修井、刘松锋
造型设计    陈敏正、秦锡林
服装设计    刘妹婷、张梦雪
视觉特效    张伦、马佳、要宇潇