錯位 - 江湖迷人

１～１５集（大結局）

　愛奇芸の迷霧劇場でこの夏に配信されて、ずっと気になっていたんです。やっと見ることができました。

　おもしろかったです。

　このドラマ、原作は明記されていませんが、元ネタは松本清張の「渡された場面」だと聞きました。ドラマの別の題名が「交錯的情景」。これは松本清張の「渡された場面」の中文タイトルなんですね。
　「渡された場面」はもう遥か昔に読んだことがありますが、覚えているのは小説の盗作と殺人事件が絡んだ話だったという程度。新鮮な気持ちで見ることができました。

　何しろ元ネタ松本清張に監制が「隠秘的角落」の韓三平、ミステリ好きとしては期待したくなりますよね。

　ドラマは秦江市で起こった若い女性が自宅で惨殺されるという猟奇的な事件から始まります。この事件の捜査を担当することになったのが、復帰したばかりのベテラン捜査官姜光明と初めて現場に出られると張り切りすぎて暴走気味な石落。
　推理小説マニアの石落は、この殺人事件の現場の状況が大ヒットしている「黒雨」という本の冒頭の描写に瓜二つだと気づきます。まさかね～と言いつつ、他に手がかりもないことから彼らは作者の顧己鳴の元に聞き込みに行きます。

　やがて、この事件の犯人は見つかりますが、あくまでも暴行と強盗は認めても殺してはいないと言い張る犯人。さらに事件の捜査を続ける中に姜光明は被害者が飼っていた犬が見つからないことに疑問を抱きます。

　事件を追う刑事たちはその犬を追う中で、もう一人の作家唐尋が現場にいたことを発見します。ところがこの高尋はすでに病気でなくなっていました。
　彼らは高尋の足跡を追って、方海市のホテルへと向かいます。

　そこで彼らはもう一人このホテルの従業員江娜という女性が行方不明になっていることを知ります。

　このドラマはこの秦江市と方海市の二か所、事件が起こる前後の２０１８年と捜査が進められている２０１９年の二つの時間軸を舞台に展開します。捜査の対象となってくる顧己鳴とその未婚妻で大富豪の一人娘蘇真真、被害者と想定される江娜、すでに故人となっている高尋とその妻の物語を紡いでいくのと同時に、姜光明とその夫徐康との不安定な夫婦関係も描かれていきます。

　同じ愛奇芸でも恋恋劇場ではないので、彼らの愛情生活がメインになってはきません。でも、そういう内容がこの事件の背景をしっかり作っていて、ドラマに厚みを与えていると思いました。

　推理ドラマななので、これ以上事件の中身には触れません。って、もう十分言ってしまった気もするｗ

　とにかく俳優陣がみな芝居がうまいんです。特に顧己鳴を演じた佟大為がすごかった。小説家として世に出たい、立身したいとやみくもに奮闘している青年がチャンスをつかむためにどんどん泥沼にはまっていく姿を迫力満点に、でも高ぶることなく演じて見せてくれ、目を離すことができませんでした。

　姜光明の馬伊琍は作品によって同じ人？と思ってしまうくらい雰囲気を変えてきます。今回は事件の細部を見逃すことなくとことんまで真相を追い続ける刑事と、妊娠に気づきはしたが夫婦生活は微妙に揺らぎだしているという一人の女性の二面を巧みに表現してくれました。

　顧己鳴の未婚妻蘇真真を演じたのは、藍盈瑩。「甄嬛伝」の浣碧以来、上から目線で失礼ですが、見るたびにうまくなっている俳優さんだと思います。

　高尋は「琅琊榜」の王勁松。こちらはさすがの存在感です。

　江娜の鄭水晶は「他是誰」に出てましたが、今回の方がよかった。

　姜光明の若い相棒石落は高至霆。数年前の「偵探語録」の時とほとんど同じ顔してますｗ

　でも、忘れてならないのは花椒という名のこのワンコ。人間の俳優陣そこのけの名演技でした。

　松本清張の「渡された場面」を読み返してはいませんが、置かれた状況から這い上がろうとしても果たせない人間の焦燥、怒り哀しみ、そこから犯罪へと手を染めていく話の展開はらしいかなと思いました。
　ただ、このドラマのような捜査主任が女性刑事だということはなかったはず。

　松本作品を読むといつも内容に圧倒され、読後には被害者被疑者の生きざま等にざらっとした感傷が残るのですが、このドラマではもう少しすっきりとした感覚で見終えることができました。

演　員　　　　　角色

马伊琍　　飾　　姜光明
佟大为　　飾　　顾己鸣
高至霆　　飾　　石落
蓝盈莹　　飾　　苏真真
王劲松　　飾　　唐寻
郑水晶　　飾　　江娜
宋宁峰　　飾　　徐康
徐百慧　　飾　　杨慧
高曙光　　飾　　王洪波
魏子昕　　飾　　黄知章
李　彧　　飾　　李非
王艺哲　　飾　　小章
路　宏　　飾　　贺鹏
甘昀宸　　飾　　孙斌
邵伟桐　　飾　　刘强
王建新　　飾　　苏哲
杨　昆　　飾　　姜母
付　磊　　飾　　张警官