江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

走走停停

走走停停

 

 「流水迢迢」据え置きにしたまま、「大夢帰離」見始めました。
 ちょっと古装劇が続くと、違うテイストのも見たくなる。ということで、「箸洗い」的に胡歌の映画「走走停停」視聴。

 今年上半期の映画です。
 また、胡歌売れない脚本家役?とか思って見始めたんですけど、似たようなところもあり、全然違うようでもありw

 

 地方から北京に出てきて、戸籍なしに働いている若者たちを北漂と呼ぶそうです。成功すればよし、何かモノになるんじゃないか?とあてもなく北京に居続ける青年たちも多いのではないでしょうか。

 主人公の呉迪は、もう40歳近く。でも、モノにはならず、付き合っていた彼女にも去られ、同居していた友人にも去られて、彼自身も故郷へと帰ることになります。というより、それしかない。

 故郷では、両親と妹のいる実家に舞い戻りますが、仕事を探してもうまくいかず、やっと父親のツテで定職につけそうになっても今度は「9時から6時まで働くなんて、俺には向かない」と断ってしまう。

 

 

 そんなフワフワした生活をする彼が町で偶然中学時代の同級生馮柳柳と出会ったところから、ドラマが回り始めます。

 彼女は離婚して一人で子どもを育てながら、地方局のレポーターとして働いています。その馮柳柳は北京から舞い戻った呉迪はいいドキュメンタリのネタだと考え、彼に自作の脚本を映画化することを勧めます。その様子を撮影して、自分の作品も作ろうというのです。

 

 そこで、母親の協力で父親のへそくりを持ち出し、超緊縮予算の映画作りが始まります。カメラマンは馮柳柳がつれてきたし、男主には一応プロの俳優李遠を雇えたけれど、女主は昔舞踊学校を目指してたことがあるという呉迪の母親が演じる。兄にツンケンしてる妹も巻き込んで、呉家を舞台に撮影がスタート。それは同時に、馮柳柳がドキュメンタリを制作するためにもう一つのカメラを回し続けるということになります。

 

 

 この映画の中で呉迪たちが撮影しているモノクロの映画は、「マディソン郡の橋」を想起させます。でも、科白の中に小津安二郎リスペクトが出てきて、なるほど小津テイストなのかと納得。もっとも小津安二郎作品は何本も見てるけど、詳しいわけでもないので違ったらごめんなさいです。小津作品の市井の人々の人生へのやさしい視線だけでなく、刺激的じゃないけど渋みを感じさせるところが私は好きなんです。そういう捉え方をすると、この「走走停停」という映画自体もそういう雰囲気を持っています。

 

 映画の冒頭から、呉迪が来ているのは伸びたTシャツにハーフパンツ。いかにも体だけは育ったけど、中身はまだ大人になりきっていないという雰囲気を醸し出しています。



 余談ですが、彼だけでなく、多くのキャラがいろいろなTシャツを着て、出てくるのが楽しかった。一番気に入ったのは、妹の呉双が来てたでかい字で「滚」と書かれたのです。いいな~と思ったらちゃんと売ってたw

 

 舞台装置も最初の北京の汚部屋、ごちゃごちゃしてるけど生活感あふれる故郷の家、三年後のその変容とかも悪くなかった。


 帰ってきた呉迪の部屋は、妹と共有してた昔の子ども部屋。二段ベッドの上下を争うもう十分すぎるほどおとなの兄妹とか、笑いを誘うけどなんかつらみの方が大きいんですよね~

 こういう演出もすばらしいけど、何より配役が絶妙。

 

 主人公の呉迪は、フワフワヘアの胡歌がやっぱり何かうれしそうに演じています。「不虚此行」と同じように脚本を書こうとしていますが、あちらの主人公と違って呉迪は脚本家でもなければ、まだ何者でもない。40近くになっても、自分の将来はおろか現在にも手ごたえを感じられない人物です。

 馮柳柳の高圓圓は、呉迪のドキュメンタリでチャンスをつかもうとします。ところが、撮影した映像を上司に奪われる結果になってしまい・・・彼女も、何者かになろうとしてあがいています。

 呉迪の父親が周野芒、母親が岳紅、映画の主人公に雇われる李遠が劉鈞という顔ぶれ。豪華です。

 

 俳優陣では何回もびっくりさせられたんです。
 最初が呉迪を見捨てたルームメイトが胡歌のリアルずっ友袁弘だったこと。1分あったかどうかの出番でしたが、この二人がバラエティ以外で共演するのを見るの、何年ぶり?とムネアツなところに来たのが、二人目。

 呉迪の妹呉双を演じる金靖、「雲之羽」の宮紫商で強烈なイメージ残していますよね。全く違う人で、最後まで「誰だっけ~?」と首ひねり続けました。演技とメイクのなせる技、すごいですw

 三人目が、馮柳柳の夫役でちょろっと出てきたのが張魯一。こちらはそれでも何回か映ったので、あれっ?から確かめることができました。

 

 走走停停というのを日本語でどう表現したらいいのかな?と思ってましたが、ラスト近くに出てきた道路が渋滞しているシーンで、ああこれなんだと腑に落ちました。彼らの人生もちょっと行っては止まり、隣の車に抜かれ、それでも確実に前には進んでいくんですね。

 

 ということで、これもなんか胡歌が好きそうな映画と感じました。でも、「不虚此行」よりはずっととっつきの良い映画だと思います。何しろ、分類「軽喜劇」ですから。まさに「軽」でおなか抱えて大爆笑じゃなくて、ずっとクスッとかニヤッとかしていました。

 

演 員     角色
胡 歌  飾  吴迪
高圆圆  飾  冯柳柳
岳 红  飾  吴母
周野芒  飾  吴父
金 靖  飾  吴双
甘昀宸  飾  曹哥
刘 钧  飾   李远
刘仪伟  飾   电视台领导
张鲁一  飾   冯柳柳老公
袁 弘  飾  吴迪室友

 

出品人    陈砺志、 岳洋、吴京 
制作人    陈砺志、 岳洋、刘倩
监 制    陈砺志、欹村
导 演    龙飞
编 剧    黄佳、龙飞
美术设计    王子超(美术指导)
造型设计    唐宁(造型指导)
视觉特效    史野(视效总监)