暗黒者第1季番外 原作「死亡通知単」(邦題:死亡通知書 暗黒者)
2014年に大はまりした郭京飛主演のドラマ「暗黒者」の原作周浩暉の「死亡通知単」が「死亡通知書 暗黒者」という邦題で早川書房から出版されました。大喜びで早速購入、たちまち読んでしまって、次が待ち遠しい迷子です。
その勢いでつい「暗黒者」第1季のリピートを始めてしまい、今年のお盆は「暗黒者」を見て過ごすことになってしまいました。余談ですが、ファーストランも真夏だった・・・それも昼の1時くらいに更新されるんで、仕事から帰ってしか見られなくて悔しかった。この次に更新待ちをした「琅琊榜」のときは、夜中の11時くらいだったので、余裕でしたけどw
まあ、それから第2季が始まったあたりも含めて、何回か通してみてるんですが、今回は特別。原作と比較しながら、もう一度ドラマを見ることになりました。
というわけで、珍しく書籍をとりあげました。ドラマに関係してないと書籍のレビューはしないことにしてるのです。キリがないんでw
先行してみたドラマの方が主体になってしまうのは原作者には申し訳ないんですが、どうしても頭の中にいる羅飛は郭京飛・・・
まず原作で驚いたのは、ドラマにいる主要なキャラの何人かがいない、ドラマオリジナルキャラだったんですね。第2作以降に登場する可能性はありますが、少なくともこの本の中には登場しない。
そのいないキャラの中には、二隊長周浩、ゴスロリでかためた法医梁音、羅飛の友人薛天も含まれています。薛天なんかは絶対後の本には出てくるんじゃないかとは思うのですが、ちょっとびっくり。
二隊長とか薛天とかお気に入りキャラなんで、がっかりしました。後、「もう一人の羅飛」もお気に入りだったのですが、出てこなくて残念・・・まあ、映像ならではのキャラですね。
それに、ドラマ全46集で扱われる多くのエピソードはほとんどドラマオリジナルなのです。これはほんとドラマのボリュームを小説と比べれば、予想は付くんですが、原作の物語はほとんど最後の37集以降にあって、つまり30集以上はオリジナル!
冒頭の事件は原作とは違うものに差し替えられ、原作の自信に満ちたベテラン刑事の羅飛より、ずっとエキセントリックでいかにも郭京飛な羅飛が登場してきます。
となると、元々の原作のファンの方はドラマを魔改造と受け止められたのかもしれないな~とは思うのです。
けど、このドラマ、いっぱいオリジナルをぶちこみ、登場人物のキャラもかなりいじっているにもかかわらず、根っこのところは原作から踏み外してないと思いました。オリジナル部分のせいで冗長になってしまってるアレとか、原作の根幹ぶち壊してるソレとかと比べるのは申し訳ないぐらい。
私が原作に手を出すのは、「中華ドラマにはまった、つい調子に乗って原作にも」というパタンなので、どうも原作の方が二次創作に見えてしかたないという困った部分を抱えているんですが、この小説「死亡通知単」とドラマ「暗黒者」の間にはそんな感じはしませんでした。小説にない部分を巧みに膨らました二次創作がドラマなんだと受け取ることができました。これは原作の骨格がしっかりしてたためだろうし、ドラマの制作陣の原作へのリスペクトがあったからだろうなと一人納得してます。
まず羅飛は、警察学校の教官ではなく18年前の事件にかかわったために出世の道を閉ざされ、地方でくすぼっていた現場警察官です。富二代とかではなさそうです。ただし、きわめて有能で何件もの事件を解決しています(この物語も小説になっているそうで、読みたい!)
羅飛の過去はドラマの通りですが、事件そのものが12年前ではなく18年前になってます。これは年齢的に郭京飛に寄せたのかもしれないですね。
羅飛が現場警察官なら、交代に教官だったのが心理学者の穆剣雲。特捜班を率いる韓灝、コンピュータを操る曽日華、アクション系の熊原はほぼそのまま。ただ、曽日華も熊原も部下のある立場のようです。熊原は小説には出てこなかった周浩の二隊長の職分をカバーしてるのかも。
大きくキャラが違うのは尹剣。第1季の尹剣は経超が演じてますが、この尹剣が強烈な印象を残したためにその後の「如懿伝」や「白髪」での彼を見ても、正義感が強くて誠実、鑑識の腕は一流だけど、とてつもない臆病で「警察の恥」とまで言われるいじいじした尹剣の顔が浮かんできてしまうのです。
それはともかく・・・原作の尹剣は鑑識でもないし、臆病でも、「零点一」でもなく、テキパキした有能な警官で韓灝の助手、「副官」的存在です。
ドラマの半分以上が、原作にはないDarkerとの闘いにこの尹剣のロマンスとかそれぞれのキャラの過去も織り交ぜたオリジナルなのです。
そこで起こる事件には世相を取り込んでいるし、社会批判的な内容もありました。児童誘拐とか子どもたちが大人の被害者になるエピソードが数本あって、強く記憶に残ってます。かなりきつかった。
そういう事件の犯人を暴いて、勝手に処刑するのが暗黒者Darkerなんですが、原作ではEumenides(エウメニデス)。これはドラマでDarkerと変えて正解でなかったのかと・・・読んでる分にはEumenidesでも問題ないですが、ドラマじゃ短く発音しやすい方がよいかと・・・私も助かるw
37集を過ぎるとドラマも原作にほぼ準拠して、話が進んでいたことがわかりました。中身はお口チャック。本を読んでくだされw
私はドラマを見たときに残ってた羅飛の私生活にかかわる疑問が、原作読めばわかると思ってたんですけど、これは期待外れ。警察官としての羅飛のこれまではわかるんですが、どうしてそんなに金に困ってるんだとかいつも買ってる宝くじはなんだ?とかいろいろわからないまま。こういうのは順調にドラマが作られてたら氷解してたんでしょうかねえ~今となってはなんともはやですが・・・
なんにしても初めからあきらめていた中国のミステリが続々と出版されるという現状は、まるで夢のようです。もちろん「三体」を初め、SFの方が先行していますが、他の分野にもこの動きが広がってきてくれるのも期待しています。とりあえず、「琅琊榜」なんかどうでしょうかね~
ついでにドラマの暗黒者、第1季だけでもいいので、日本にも入れてもらえないでしょうかね~~
追記:トップ画像の人たち
韓灝 羅飛 穆剣雲
梁音 熊原 尹剣
曽日華 王惢