無名 - 江湖迷人

無名

　そろそろ今年の春節映画がネットで見られるようになってきました。この「無名」は王一博が主演の一人と言うことで、本邦でも話題になってました。でも、迷子的にはやっぱりトニー・レオン梁朝偉の映画というのが一番に来て、共演が王一博という感覚です。共演に黄磊、周迅、大鵬と錚々たるメンバーが並んでるのは、さすがと言う感じです。

　この映画は日本の真珠湾攻撃から日本の敗戦に至るまでの中国国内での諜報戦を描いています。この当時、中国では南京に汪精衛の政権、重慶に蒋介石の国民政府があり、それと共産党の三つの勢力が対立、日本や諸外国の利害とも絡んで目まぐるしく時代が動いていました。映画では、主に汪精衛政権と日本軍の諜報組織を舞台に上海での諜報戦が描かれています。

　登場人物たちはみなどこかの組織に属し、諜報活動に関わっている「無名」な人物たちです。

　演員表を見ても分かるように彼らは姓と社会的な立場を表す敬称で表され、個人としての存在感は薄められています。歴史の陰で彼らの使命感や思い、愛情、人生などが時代の中で翻弄されていく姿を追って行きますが、一個人としての存在というより当時の「無名」の人物たちを代表しているとも言えます。

　命がけで任務を果たし、裏切りあう彼らが最終的にどこの組織に属しているのかは最後まで明らかにされない謎です。

　ということは、また具体的なことは何にも書けないということになります・・・

　なので、演員回りの感想などを・・・

　この時代を背景にした梁朝偉の映画というとすぐに思い出すのは「色／戒」ですが、あの映画とは全く違う雰囲気です。でも、こちらの映画の方にも中年の魅力満載に見えるのは私だけ？
　細かい感情の揺れを静かな表情の中に表す微妙な演技は彼ならではだと思うんですよね～しかも、可愛げがあって、目をそらさせてくれない💦

　葉先生の王一博は沪语（上海語）も日本語も操っていてすごいという話もありましたが、そもそもこの映画、彼に限らず科白が少ない。確かに沪语の台詞も日本語の台詞もかなり流暢に話してますが、それよりしゃべらない演技の方が多かった。無口というとすぐ「藍忘機！」と思い出す人も多いはずです。こちらの演技を見ると「陳情令」の目線での表現は、まだまだだったんだと思えてくる。今度は目線どころか、首筋の筋肉とか額の血管のようなところで感情を表す演技が求められていたと見ました。

　そして、梁朝偉と王一博の長時間にわたる殴り合い場面はこの映画一番の見せ場と思います。１９９７年生まれの王一博を相手に１９６２年生まれの梁朝偉がガチで長時間のバトルシーンを演じているのが感動ものでした。

　冒頭に梁朝偉の何主任に情報を持って自首してくる張先生は黄磊。その張先生と５年間にわたって夫婦のふりをして任務に就いていた陳小姐に周迅、唐部長に大鵬こと蕫成鵬とか名前を見ただけで視聴意欲をかきたてられる人たちがそろってます。

　これからご覧になる方に、余計なお世話も少し・・・
　王一博目当てでご覧になる方もいるかと思います。それも映画を見るきっかけの一つです。隣国の俳優や文化、歴史への関心を持つことは素晴らしいと思います。
　ご覧になるとしたら、その前に少し歴史をおさらいしておくことをお薦めします。典型的な抗日映画ではないと見ましたが、心構えはしておく方がいいと思います。