江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

小戯骨

 「小戯骨」というタイトルにしましたが、こういうタイトルのドラマがあるわけじゃないです。
 ちょっと説明がいるわけで、本題に入る前にお付き合いを・・・

 「小戯骨」というのは2015年から湖南広播電視台が制作している一連のシリーズの名前です。英語名が「STAR OF TOMORROW」になってる通り、10歳前後の子どもたちによるドラマのシリーズ。特筆すべき点は、このシリーズではこの半世紀くらいに出た「経典」と位置付けられるような映画やドラマをコンパクトにまとめ、子どもたちだけで演じている点です。ちょうど日本の各地で演じられている「子ども歌舞伎」をイメージしてもらうといいかもしれません。

 最初にこのシリーズに触れたのは、ちょうど「刺客列伝」を見てた頃。「刺客列伝」というのは、モブの隅々まで男性しか出てこない、かといってそういう単性の世界というわけでもなく単に「たまたま女性の登場シーンが一つもない」という感じのドラマ設定。アイドルグループSpeXialのメンバーを中心に、あまり演技経験のなさそうな若手俳優がとんでもなく陰険な謀略ドラマを展開していて目が離せなくなった不思議な魅力のあるドラマでした。
 私的には、この「刺客列伝」と対になる形で脳内に位置づけされているのが一連の「小戯骨」シリーズ。
 こちらはモブの隅々まで7~14歳ぐらいの子どもたちだけが登場してるのですが、年齢にかかわりなく彼らはプロの俳優です。ドラマの内容も多少は改変されているものの、ほぼ元の話に沿って展開。子どもの主演するドラマにありがちな「学芸会」的な雰囲気とか「子どもっぽさ」はありません。

 このシリーズ、最初のころは伝統を受けつぐ、若い世代に歴史を伝えるとかいうことで、1960年前後の映画をリメイクしていました。昔、日本でもバレー公演があった「白毛女」のような革命劇がメイン。再現度の高さが話題になったそうですが、全くその通りです。

 そのうち、だんだんと手を広げ、1990年台あたりの「経典」ドラマを取り上げています。できるだけ「経典」に近づけるというコンセプトなので、元ネタになったドラマなんかを見てる人には面白さもひとしおだと思います。

 その中に、今回日本でも見られることになった「包青天」「水滸伝」「三国志」「紅楼夢」も含まれています。

 「西遊記」のように、特定の元になるドラマや映画のない作品もあれば、「紅楼夢」のように1987年のドラマそっくりな衣装やメイク、台詞回し、目配りで驚かされるものまで多様。

 私は、去年までに出た作品の半分くらいを見てあったんですが、日本でも出ると聞いて「もったいない」精神にスイッチが入り、まだらに見てあった作品とスルーしていた作品に手を付けてしまいました。

 今年も新作が発表されていて、それが「武林外伝」というのでのけぞった。

 だって・・・寧財神の「武林外伝」ですよ、彼が吸毒で捕まったせいで、「龍門鏢局2」とかちゃんと出なくなっちゃったのに、最初のコンセプト考えると「これ、あり?」と驚きました。でも、「武林外伝」は好き。

 

 ま、それはさておき、とりあえず昨年までの作品でひとくくり。
 タイトルを挙げているのは、見た作品だけです。

 

 「我要当紅軍」「洪湖赤衛隊」「白毛女」「劉三姐」は60年前後に作られた映画の翻案です。どれも虐げられていた民衆が紅軍と共に立ち上がるという話。ミュージカルというわけではないけど、歌のはいっている作品もあり、子どもたちが歌っています。

 

 「三笑尋親記」とか「白蛇伝」、「花木蘭」は短めの作品です。「三笑尋親記」は唐伯虎と秋香の話ですが、結婚相手ではなく、生き別れの兄妹設定になってます。「白蛇伝」は趙雅芝主演のドラマをもとにしてます。CG場面もしっかりしていて、キッズ版とか高をくくっていると驚かされます。

 「花木蘭」はディズニーの「ムーラン」をにらんで作ったようですが、ミュージカル仕立てでとても楽しい出来上がりになってます。とてもおもしろいのですが、これ絶対日本には持ってこれないだろうと思いました。
 BGMの多くが琅琊榜のBGMを使っているのは今更びっくりしないし、かえって楽しく見られたんです。でも、「替え歌」になってるのが、世界的なヒット作の曲だったりするんですよね。音楽方面にはまったく疎い私でさえ、聞いたとたんに元の歌詞が出てくるんですからw でも、替え歌の出来はよかった。

 

 続いて、中国四大古典。
 最初に作られたのは「西遊記」の紅孩児部分を抜き出した「紅孩児」のようです。これは特にもとになったドラマも映画もない感じです。六小齢童の「西遊記」がベースかと思いましたが、そうでもなさそう。

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 このような衣装が使えるのは子どもたちが演じるからこそだとは思いましたが、ドラマ自体の出来は残念ながら今一つですかね。右端、鉄扇公主となっておりますw

 

 ここからが、今度日本で「中国古典名作選〜三国志水滸伝紅楼夢・包青天」というタイトルで発表される分になります。

 

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 「放開那三国」は貂蝉の視点から描く董卓刺殺の物語。貂蝉呂布董卓の扱いをどうするんだろとひやひやしましたが、そこはうまく翻案してありましたね。
 
 これはドラマの原作はなさそうですが、同タイトルのゲームがあるみたいです。でも、関係があるかどうかは不明。

 

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 「紅楼夢」は「紅楼夢之劉姥姥進大観園」という長いタイトルになっています。これは日本でも出されている1987年版の陳暁旭主演ドラマをベースに、男女の愛情を扱った部分を削って、劉姥姥と賈家の人々の交流を脇に賈家の没落を描いています。
 なんといっても少女たちのメイクやしぐさが名作と評判の87年版のドラマそっくり。まだ幼い少女たちが演じるからこその部分もあって、不思議な魅力があります。
 ここだけの話、賈宝玉はこの小戯骨版の方が好ましく思えました。

 

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 で、「水滸伝
 元になったドラマは1998年の李雪健が宋江をしたバージョン。「好漢歌」を初め音楽までそのまま、ロケにもちゃんと行ってるし、アクションシーンもがんばってます。
 ただ原作は膨大なので、鲁智深、林冲宋江の話から、梁山泊招安、方腊征伐、宋江の死とコンパクトになってます。で、くどいようですが、誰が演じても宋江はうざい。それだけ、演じている少年が上手だということにもなります。

 この作品、どうやら98年版でも使った撮影地の設備を使ってるみたいで、衣装は子どもたちサイズで作ってもらったけど、家具なんかはそのままなんで大人サイズの椅子に座ってると、足がつかない感が思い切りして愛らしいw

 

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 そして、包青天。少しは日本でも名前が通ってきたんでしょうかねえ?
 このシリーズでの包青天は、台湾の金超群が演じたバージョンをベースにしてます。演目は、昨年日本でも出た黄維徳が包青天を演じた「開封府」にも取り上げられていた「包青天之秦香蓮与陳世美」
 真っ黒な顔に額に月亮の包拯、御猫展昭、公孫策の鉄三角に、王朝、馬漢、趙虎、張龍の4人がそろってるだけで、十分満足。
 実は、一番初めに見たのはこの「包青天之秦香莲与陈世美」でした。見てるうちに、子どもたちが演じてるんだということを忘れてしまった自分にびっくりしました。
 展昭を演じている釈小松、「紅楼夢」の賈宝玉でも出てたんですが、さすが少林寺の弟子だけあってアクションはさすが。メイキング見てると、ほかの子たちにアクション指導してたりして、なかなかの大哥ぶり。当時11歳くらい、これからが楽しみです。

 

 子どもたちに合わせて翻案してる面ももちろんあるんですが、ほとんどは原作や元の作品に則ってドラマが進みます。

 最初の理念はもちろんあるのですが、作ってるうちに子どもたちの底力というか可能性に制作側が引っ張られて、どんどん取り上げる範囲が広くなってたんではないかなと勘ぐってます。
 最初から参加していた子どもたちが今度はより難しい脇に回って、新しいメンバーの演技を支えてい様子も見えてきます。何より彼らのオーディションの様子とか見てると、この子達、プロだと思わされます。

 ところで、オーディションで梅長風やってた少女もいたんです。この調子でいくと黄日華版の「射鵰英雄伝」とかありなんじゃ?とか、「還珠格格」は?とか妄想してたんですが、いきなり「武林外伝」が現れてしまったのです。これから、どうなってくんでしょうね。

 最後に、来月登場する日本版は「中国古典名作選〜三国志水滸伝紅楼夢・包青天」ということで、特に「子どもたちが演じる」ということを前面に出していません。知らずに見た人が、あっけにとられる顔が目に浮かびます。逆に「子どもだけ?学芸会か~」とか油断してるとやっぱりあっけにとられるかもw
 
 加えて、どうしてもこういった長大な原作、長いドラマにはとっつきにくいものですが、概要をつかんで「入門編」とするのもいいかもしれません。

 いずれにしても見て損はないと思うのですが、毎度毎度日本版の配信が見られない地方ケーブル局利用者。泣いております。