江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

平原上的摩西

1~6集(全)


 お薦めしてもらったので、ちょっと覗いてみるだけのつもりがたちまち目が離せなくなり、あっという間に最後まで見てしまいました。その上、この見るものいっぱいのタイミングで2周めリピしています。

 全6集なので短いと言えば短いんですが、一つ当たりが60~80分くらいあるんで、一般的な45分なら10集ぶんくらいになるでしょうか?

 

 ドラマはタクシー運転手殺人事件に取り組む刑事ドラマと紹介もされていますが、それがメインテーマではないと思います。
 迷霧劇場の一つとして公開されましたわりにはミステリ味が弱い、文芸ドラマだという評価もあるようですが、私には十分おもしろかった。

 

 1980年代、主人公の刑事庄樹の両親が知人の紹介で見合いをし、結婚するというところから、ドラマスタート。社会の変容と共に移り変わっていく庄一家と町の人々が描かれます。

 登場キャラの中で一番注目したのは、庄樹の母になる傅東心です。彼女は見合い相手の庄徳増と同じ工場で働いていますが、周囲と交わらず、常に本を読み、絵を描いています。彼女の父は元大学の教授で暴漢に襲われて聴力を失い、仕事を失ったという設定。はっきりとは描写されませんが、文革時代に迫害を受けた知識人を想起させます。娘二人は工員として働き、妹の東心はろくに本も読んだことのないという庄徳増と結婚。彼は他の娘たちとはどこか違う彼女を見染め、人とは関わりたくない、本を読むのも絵を描くのもやめられない、料理は苦手という彼女を承知で結婚します。

 夫は約束を守って、彼女の好きなようにさせているし、それなりに平穏な結婚生活と見えます。

 

 彼は教養はなくても、時代を読んでうまく立ち回り、一家の生活レベルは急上昇していきます。

 

 東心は子どもが生まれても、その子がとんでもない悪たれで次々問題を起こして学校に呼び出されても、生活レベルが上がっても、どこか他人事で違う世界に生きている感じです。

 

 そんな彼女は、近くに住む李守廉の娘李斐が自分と同じような芸術への関心を持っていることを知って、彼女を指導することを申し出ます。李守廉は庄徳増とは逆に働いていた工場の閉鎖以後、何一つうまくいっていません。

 町ではタクシー運転手が殺されるという殺人事件が起こり、その犯人も見つかっていません。そういう時代を生きる庄樹と李斐は子ども時代の一時期を共有することになります。

 

 ところが、ある日突然彼女と父は姿を消してしまいます。

 

 数年が経ち、考試には受からず、補習にも身が入らず、不良少年たちと暴れまくっていた庄樹は、ある警官のことばがきっかけで、警官になることを決意します。

 2003年、警察学校を卒業した彼は刑事になり趙小東を師父として、忙しい毎日を送っています。趙小東は彼の師父蒋不凡を殺した犯人をずっと追っている。

 その二人の前に、新しい事実が見えてくる・・・

 この殺人犯を捜していくというストーリがドラマ後半のメインです。その中で庄樹は、ずっと消息不明だった李斐と再会することになります。

 

 庄樹と李斐の話はもちろん大事な柱ですが、どうも未公開の映画版の方がそちらに重点があったように思われます。

 それより私的にはここまで来て庄徳増と別れ、町を去る決心をする傅東心の変容が興味深かったです。ずっとどこか別世界の住人で、この世のことは流されるままの彼女がようやく自分の居場所を探す決心をしたと言う感じでしょうか?「去有風的地方」の主人公が数か月で見つけ出したものを東心は20年以上かかってもまだ見つけ出せていないということかもしれません。

 

 庄徳増はずっと別居していた彼女が差し出した離婚届けにいまさらと言いながら、サインする。彼は一番東心を理解しているし、愛している。息子に対しても愛情あふれる人物です。でも、彼にも秘密がある。それだけでなく、登場人物の大勢が秘密を持っています。

 そんな中で殺人犯を追って行く庄樹たち・・・ 

 

 ミステリドラマとしてはきちんと終わりをつけています。冒頭の見合い場面がボートに乗る二人で始まり、ラストシーンもまたボートで終わったとか、各パートが互いに絡み合いながら進んでいきます。

 ことに庄樹が警察学校を卒業して以後の後半の話とそれまでの前半の話は、前半が後半に向けての大きな伏線になっていて、ドラマを一度見終わった後、人間関係や彼らの動きに気を付けて見直すと最初に見えたものとはまた違った景色が見えてきています。

 

 このドラマには同じタイトルの原作があり、2年前に劉昊然の庄樹で映画化もされていますが、なんか大人の事情で現在公開されていません。

 ということで海報だけw

 ずいぶん感じが違う気がする・・・こっちも見たかったな~

 

 ドラマの庄樹は董子健、やっぱりこの人うまいです。緩急のある演技から目を離せません。
 傅東心に海清。どこか焦点のあってない傅東心の目とか、この人もすごくうまい。

 

 実は登場人物たちには、ドラマ開始時点以前からの関係があったり因縁があったりして、それが彼らの人生にも事件にも結びついているのですが、それが徐々に明らかになってくる。すると前に見たものが違った様相を見せてくるのです。というわけで、二回目リピしております。

 

角 色  演 員
庄 树 :董子健
傅东心 :海 清
李 斐 :邱 天
庄德增 :董宝石
赵小东 :张 晨
李守廉 :梁景东
蒋不凡 :王 铮
孙天博 :张宁浩
庄树童年:郑昊森
李斐童年:张夏萌
傅东华 :  艾 敬

 

制作人 :戴莹
出品人 :  龚宇
监 制 :刁亦男,王小晖
原 著 :双雪涛
导 演 :张大磊
编 剧 :双雪涛,张大磊,郭涛,肖睿,胡蓉蓉,张桉阳,庞博
美术设计:兰志强
造型设计:孔令媛