江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

最近見た映画たち 妖猫伝

妖猫伝 

イメージ 1

 日本での公開も始まりましたが、どうしても吹き替えで見るのに抵抗があって、まだ映画館に行ってない。でも、中文版はもう二回見た。原作もざっと読み返した・・・
 私は、この映画にかかわらず、映画は字幕派。テレビでは吹き替えも見るけど、映画館では見たくない人。
 なのに、吹き替えでしか公開しないなどという・・・
 公開日に行くきっかけを逃してしまったんで、ますます行くかどうか微妙な公開二日目。
 
 ということで、中国史を扱った日本人原作の玄幻小説の映画化作品「妖猫伝」の感想文。
 
 陳凱歌は「無極」と「道士下山」の借りを返せたかというようなことが中華サイトの評論に出ていましたが、まあ肩透かしの多かったというか何が言いたかったんだ?と言うような彼の作品を何本か見た後で、この映画は起承転結もきちんとあるし、画面もきれいだし、新しく襄陽に作られた唐時代の長安の巨大セットのスケールと妖猫を始めとするCGも上出来の部類で2時間以上のこの映画を楽しく見通せることができました。
 
 夢枕獏の原作との大きな違いは、空海と共に事件にかかわっていくのが橘逸勢ではなく、唐の詩人白楽天ということ。
 ただ白楽天に変わっただけではなく、二人が主演。中文版では、配役トップは黄軒@白楽天です。でも、まあほんとの主役は猫ですな・・・
 
イメージ 3
 
 長大な原作を映画用にコンパクトにまとめた脚本は陳凱歌と王恵玲。多くの登場人物やエピソードを整理して、わかりやすい構成になっています。
 
 黒猫の登場から始まる夢枕獏ワールドの妖の味わい、ケレン味たっぷりの極楽之宴、華やかな長安の街と画面的にもまあバランスの良い構成かと。
 
 最近大人気の黄軒の白楽天の軽みとものぐるしさと執着、同じくすっかり売れっ子劉昊然の白龍の若者のほとばしる一途な愛情と狂気に、どこか人を食ったような雰囲気もある染谷将太空海の有能さと洒脱さ・・・それぞれがキャラにはまってた。
 他の男性キャラの配役も、結構一癖あるベテラン俳優が起用されていた。
 丹翁の成泰燊は墨淄侯@琅琊榜之風起長林、黄鶴の劉佩琦は老四@那年花開月正圓、玄宗の張鲁一や陳雲樵の陳昊は現代劇の方ですっかりおなじみ。阿部寛が出るって聞いたときには、てっきり大猴だと思ったが、阿倍仲麻呂だった。本人もソグド人の役と思ったとか聞いたんで私の早とちりもスルーしてもらおう。
 女性キャラの方はスリムな楊貴妃に違和感。この人は初見。お人形さんのような楊貴妃であでやかなんだけど、むしろ春琴の張雨綺の方に主役感があった。張天愛は玉蓮だというのでもうちょっと活躍するかと思ってたので、ちょっとがっかり。
 
 まあ、とにかくこの映画自体はおもしろかったんです。
 
 やっぱり引っかかるのは「吹き替え版のみ」上映という公開の仕方。
 
 30年以上前に作られた井上靖原作の「敦煌」はこの映画と同じように中国史を扱った日本人の小説が原作なんですが、当時はキャストもスタッフも日本人で中国でロケをしただけという感じでしょうか。元から日本語で撮影されたこの映画が日本語で公開されたことに当時も今も抵抗感はありません。テレビの人形劇三国志とかアニメと同じ感じ。
 
 でも、この映画は違う。中国との合作で、監督はじめキャスト、スタッフの主だったところが中国側。演員だけ見ても、日本人俳優は日本人の役だけ。空海阿倍仲麻呂空海の師父、阿倍仲麻呂の側室、そして空海が唐へ分かる船の中で出会った赤ん坊を抱いた女性の5人だけ。
 
 で、全編話される言葉は中国語。空海は唐の言葉ペラペラな言語の天才児、なん十年も唐にいた仲麻呂やその側室はもちろん中国語。空海の師父には中国語の科白なし。
 
 この状況で、日本語の会話がなされる場面というのは「日本語でなければ」という必然性があるわけです。
 阿倍仲麻呂の側室白玲は原作でははっきり現地妻となってますが、この映画では日本人妻ではなかったのかと思えてきます。それはこの白玲は空海とは日本語で話をしているからだし、わずかな中国語の科白を松坂慶子自身がしゃべっているからでもあります。彼女の日本語なまりの中国語がそれを強調している気がするのです。
 
 当時日本女性が実際唐にいたのかということは別にして、空海が難破した船の中で出会った母親も日本人でした。この物語世界では日本人女性が唐にいるのはありなんでしょう。
 ちなみにこの女性を演じていたのは鈴木美紀という中国で活躍している日本人俳優です。場面的には短いですが、空海が心を定める大きなポイントになってました。
 
 唐代の長安がとんでもなく国際都市であったということは、原作の中でもたびたび強調されていますが、その現われの一つが多言語でもあるはずです。それを日本語ばっかりにしてしまってどうするんだ?日本の映画の国際化はどうなっていくでしょうねえ。
 
 少なくとも観客に字幕版と吹き替え版の選択権が欲しかった。
 
 ついでに、日本語題名。
 この映画、中文題名が「妖猫伝」英文題名がLegend Of The Demon Cat、原作は「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」で、日本語題名が「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」
 原作の題名でいいんじゃないかという声もありますが、まあこの「鬼」というのが日本的「鬼」ではなくて、中国で霊魂とかをさす「鬼」の方なんで、日本人には誤解されないかと考えたんだろうとは想像できる。で、主役の一人は空海だ、でも空海だけだと地味だし、世界をにらむと漢字だけじゃな~と横文字をくっつけ、それだけじゃ地味だと美しきなんとかを付ける・・・といっても、ここに派手な楊貴妃持ってくると空海とバッティングして空海の主役感が薄れる、かと言って貴妃だけだと収まりが悪いんで、史実無視して「王妃」・・・うん想像できる。
 推理ゲームとしてはおもしろいけど、どう考えてもこの映画主役は「猫」だもんな~すっきり「妖猫伝」でよかったのに。
 
イメージ 2
 
演員
 
黄 軒   飾  白楽天
染谷将太  飾  空海
張雨綺   飾  春琴
秦 昊   飾  陳雲樵
阿部寛   飾  晁衡(阿倍仲麻呂
劉昊然   飾  白龍
欧 豪   飾  丹龍 
張天愛   飾  玉蓮 
張鲁一   飾  唐玄宗
張榕容   飾  楊玉環 
田 雨   飾  高力士
劉佩琦   飾  黄鶴
辛柏青   飾  李白
成泰燊   飾  丹翁
李 淳   飾  執事官
秦 怡   飾  老宮女
松坂慶子  飾  白玲
 
職員
原著 夢枕獏
導演 陳凱歌
編劇 王蕙玲、陳凱歌