1~8集
またしても出てきた中華版BLドラマ。私的には「鎮魂」「SCI謎案集」そして「陳情令」に次ぐ4本目?ほかにも元はBLというのもあったかもしれませんので、確信は持てないわけです。
私は、同性・異性に関わらずどっちかといえば恋愛ドラマは苦手。なので、ドラマの出来、小説の出来がよくなければ、さっさと撤収してしまいます。でも、BL原作のドラマ化では、規制を潜り抜けるための制作サイドの頑張りを見るのもまた楽しくて、それもプラスになってけっこう次々とBL原作ものを見ています。
今回、スタートした「山河令」は「鎮魂」「有翡」の原作者Priestの「天涯客」を原作とするBLだそうです。「魔道祖師」が「陳情令」に、「天涯客」が「山河令」にと原作と違うタイトルになるのは、原作と違ってBLじゃないんですよ~という意味?
この「山河令」、正直あんまり期待もしてなかった。BL原作というと陈飞宇、罗云熙主演の「皓衣行」の方が話題だったし、こちらの方が先に出るかと思ってました。
「皓衣行」の出来がどんなものかはわかりませんが、「山河令」にはいい意味で予想を裏切られました。よくできたドラマだと思います。
主人公の一人周子舒を張哲瀚、温客行を龚俊が演じています。張哲瀚は「琅琊榜」の林殊、龚俊は「酔玲瓏」の十一皇子元澈です。張哲瀚は結構主役も演じているんですが、この人もなぜか主演ドラマが最後までたどり着けない人で、最後まで見たのは「琅琊榜」のようにちらっと出ているような作品だけ。今回もそれが不安要素の一つでした。
失礼ながら、「陳情令」のように若手ばかりを集めて華やかに・・・ということもないし、見た目結構地味だったのであまり期待もしないでの視聴開始となりました。
で、ふたを開けてみると・・・おもしろい。
BLどうのこうのということよりも、武侠ドラマとしての骨格がしっかりしてる。朝廷絡みの勢力や江湖のいろんな門派がたくさん出てきますが、それぞれ設定がきっちり納得できて、キャラがたっている。しかも、ちょい見せ程度の配役に多くの武侠ドラマなどで活躍してきたベテラン俳優が次々と登場してくるのがうれしくてたまらない。
丐幇がきちんと丐幇な装束で陣をはってきたり、どう見ても「書剣恩仇録」の天山双鷹と言う感じの老夫婦が登場してきたりと金庸ドラマを連想させてくれる。かと思えば、鬼谷谷主の率いる怪人たちの組織、正体不明の次々出てくる大層な二つ名の武芸者、でも、あっという間に退場・・・とかは古龍風味。
武侠迷にはこれだけでも十分に楽しい。
物語は、20年前に大魔頭が死ぬ前に残した一晩のうちに天下を得られるという天下無敵の武器を隠した武庫を開くために必要な「瑠璃甲」を大勢が探しているという背景で進みます。
周子舒は野心勃々たる晋王に使われる天窗の首領として、スパイと暗殺を繰り返してきた。10年前には81人いた仲間も次々犠牲になってしまい、晋王の下にいるのが耐えられなくなる。天窗から抜けるためには七窍三秋釘之刑を受けて、武功を失うばかりか五感も失い話すことも体を動かすこともできなくなってそのままなお3年生きるしかない。周子舒はこの釘の6本を自ら打ち、その代わりに3年の自由を得ることに成功する。
しかし、そのまま彼を放置しておくわけのない晋王の追跡を逃れるために容貌を変え、酒飲みの叫花子に身をやつして日々を送っている。貴種流離譚もどき、タイムリミット付きの主人公とずいぶんおいしげな設定ですw
その彼がただものではないと見破って、接近してきたのが温各行。周子舒が名乗った「周絮」から「阿絮~阿絮~」と追いかけまわし始めますが、彼は周子舒の正体を知っているらしい。
実はこの温客行、配下の吊死鬼に手元にあった瑠璃甲を盗まれ、なにがなんでも取り戻してこいと命じた鬼谷の谷主ですが、自分も素知らぬ顔で侍女を連れて江湖に出てきている。
この二人が、五個あるらしい瑠璃甲を手に入れようとする江湖の争いに巻き込まれていきます。
瑠璃甲を巡る争い中で一家を惨殺された鏡湖山庄の息子張成岭を助けて、五湖盟の趙敬の元へと送り届ける。しかし、五湖盟の盟主高嵩は張成岭が父親から預けられたはずの瑠璃甲を手に入れようと成岭を責め立てる。届けるまでが俺の役目と突き放した周子舒だが、別れた後の成岭が気になっている。
瑠璃甲を追っている勢力の間ではそのために殺し合いが起こるまで緊張感が高まっている。
周子舒は吊死鬼から瑠璃甲を手に入れていたが、これをあっさりと温客行に与えてしまう。温客行は瑠璃甲のレプリカを大量に作らせて、火に油を注いでいますが、彼の狙いや正体はまだドラマ内で周子舒には明かされていません。
こういうドラマの展開が興味深くて目が離せない。その上に、追っかける温各行、何とかして彼から離れてしまおうとする周子舒のやり取りも楽しい。いつの間にか「阿絮」に対して「老温」と呼び合う仲になってますw
加えて、「悪人」たちの造形が「絶代双驕」か「画江湖之不良人」かと思える。かたや「正派」らしい五湖盟や崋山派、丐幇なんかは実にスタンダードなのも好ましい。
もっとも今まで見たところでは、ひたすら周子舒に付きまとう温各行、迷惑がりながらもなんとなく共に行動するようになった周子舒の間に、「鎮魂」の二人のような同性恋を思わせる視線のやり取りとかは見られないように思います。恋愛ドラマ苦手なので、見逃しているだけかもしれません。もっとも視聴者向けのサービスシーンは確かにあるw
同じPriest原作なので、また大改編されているのかな~と野次馬根性が出てきて、原作も覗いてみようかと思っています。膨大な原作ということではなく一冊分?程度なので、私にもなんとかなりそうです。
けど、そういうことを横に置いておいて、十分楽しい武侠ドラマだと思います。