江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

天下糧倉

1~31集(大結局)

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 琅琊榜ツアーでご一緒したKさんから教えていただいたドラマ。2002年のドラマというと張紀中版の笑傲江湖と射鵰英雄伝の間ごろの作品?と、何でも武侠ドラマが比較対象になるのは、一昔前警察が押収物の大きさ比較に置いたたばこの箱みたいなもんです。
 
 このドラマは、清の乾隆帝が即位したその一年間を取り上げているんですが、主役は乾隆と彼のもとに使える官僚たち。そして、メインテーマは「食糧」です。
 乾隆時代という清朝でも華やかな時代を取り上げていても、華麗な後宮の美女たちもいなければ、目を引くイケメンも、豪華な調度や衣装も出てきません。
 
 なのに、めっちゃおもしろいんです。
 
 自分の好みだからと言ってしまえば、それだけのことなんですが、どの辺が好みだったかというお話。好みすぎて、中間でブログアップしている余裕がなかったw
 
 冒頭、飢餓に苦しむ民衆に粥を施す役人たちの姿が描かれる。粥に箸を立てて倒れれば役人の首がとぶという法があるが、米がなくてただの湯のような「粥」を配るしかない下級役人。自分の家族も餓死させてしまった役人たち21人を法に違反したと斬首にする欽差大臣劉統勛。しかし、施粥に使う米はあるべき倉に一粒もなかった。
 
 では、米はどこに行ったのか?
 
 それをずっと追及するのが、このドラマの前半のテーマとなっています。
 
 同時に、国の法律と飢える民衆の間にいる官僚たちの生き方、ありようがこれでもかと清濁併せて活写されるこのドラマ全体の基調がこの一件にすべてあらわされている。
 
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 とにかく朝廷に送るべき米をごまかす官僚たち。秤を作り変えて農民から搾取する、質の落ちるコメと入れ替える、嵩をごまかす、砂と混ぜる・・・ありとあらゆる方法で私欲を肥やしている。下級役人は下級なりに、上に行けば行ったなりに。
 
 そういう悪徳役人たちを暴き、民衆の立場に立って苦労するのが主人公の刑部尚書劉統勛と倉場侍郎米汝成の息子米河。それに乾隆によって天牢から解放された浙江巡撫蘆焯。彼らが、悪徳大臣や商人と庶民の間に立って板挟みになりながら、如何に米を作り、国庫に納め蓄えて、皆に食べさせるのかに苦心惨憺する話です。
 
 父親に三年間閉じ込められて勉強させられていた米河を助け出した娘小梳子とか、蘆焯の娘蘆蝉儿、米汝成の侍女で息子の嫁と決められた柳含月の三人の女性が登場し、彼らと共に飢饉や流民に立ち向かいます。米河との恋愛に絡む話もありますが、ただの賑やかしには終わりません。
 
 武侠ドラマとかなら、たちまち悪徳役人や業突く張りの金持ちたちをバッタバッタとやっつけて、米を貧民に分け与えるのかもしれませんが、このドラマはそういうことはしない。どうにかして、役人たちのやり口を暴き、それを皇帝に理解してもらわなければならない。
 
 後半はさらに事態が悪化。
 飢饉のために流民化し、飢えに苦しむ民衆は人肉を「米肉」と称して食べるほどに苦しんでいる。そういう事実を突きつけられた乾隆の戸惑い、怒り。聶遠の乾隆は、理想に燃える若い皇帝が現実の前でキリキリと歯を食いしばっている感じが痛いほど伝わってくる。皇帝は皇帝なりに、これからどうすべきかを模索している。
 
 この「米肉」エピソード、衣服をはがされ、吊るされた白々した裸体の女の姿が「肉」としか見えない恐ろしい場面でした。
 
 じゃあ、皇帝に使える官僚たちが悪質なのかと言えば、これも単純に善悪をつけられない。
頑迷な老大臣だと思ってみていると、雨乞いのために命を懸ける劉統勛たちの仲間に入ろうと焚き木の山に登ろうと這い出して来る。清貧な大臣と思われていた人物が、とてつもない財宝をため込んでいる。
 
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 このドラマ、最後まで見ても状況が好転するわけではない。この乾隆元年の、この危機はとりあえず最悪の事態に陥ることを回避できた。でも、それはこの時だけのこと。根本的な解決ができたわけでもなく、この先も官僚たちの悪戦苦闘が続くわけです。
 
 派手さのかけらもないドラマ展開ですが、最初から最後まで見せ場だらけ。
 どうレビューしていいのかわからないくらい。
 
 ざっくりとしたストーリはこんな感じなんですが、これに主役たちの家庭、恋愛と当時の時代を反映するようなエピソードが加わり、厚みのある物語が展開します。恋愛一つとっても、米河と三人の女性たちというとねばねばドラマを連想するんですが、一番泣きの場面が続くのが米河で、女性たちは自分の感情を隠さず、でも理性的にこの関係に結末をつけていきます。どこにも、テンションだけ高いわがまま娘とか意地の悪いうじうじ美女とかは出てこないのも、好ましいポイントです。
 
 とにかく、出てくる人物すべてが個性的で、キャラが立っている。
 
 それに、このドラマ、画面に写る建物はもちろん、大勢の飢えた難民たち、乾燥しきった土地で蠢く農民たち、乾いた大地に舞い上がる土埃でぼやける画面・・・そういったものが、実写なんです。制作時期は本格的にCGを使い出したあたりなんですが、ほとんど使ってないように見えます。
 CGの一見華麗だけど薄っぺらな画面に食傷気味の目には、逆にとても新鮮で、こちらのポイントも高いです。
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 脚本のすばらしさは言うまでもない。広げた伏線はきちんと回収されているのは当然。描かれているのは飢えに苦しむ民衆やそれに向き合う現場の下級官僚たちだけではなく、彼らの見えないところにいる紫禁城の中にいる皇帝や大臣たちの姿です。なんといっても彼らがどんな政治を立案し、実施していくか次第。
 飢えに苦しむ民衆、口先だけで現状を無視する役人たちにいらだつ米河たちだけでなく、自分の思いが家臣たちにスルーされてしまう皇帝乾隆のいら立ちも見どころです。
 
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 趙季平の音楽もピタリとはまっていて、こちらもポイントアップw
 
 書き出すとキリがないんですが、ともかくおもしろいドラマでした!
 
演員表
 
王慶祥  飾  劉統勛 
王亜楠  飾  米河
杜雨露  飾  米汝成
杜志国  飾  蘆焯
海燕  飾  柳含月
田成仁  飾  田文鏡
李 倩  飾  小梳子
聶 遠  飾  乾隆
伊春徳  飾  蘆蝉儿
張 山  飾  龐旺
譚非翎  飾  苗宗舒
縄 中  飾  高斌
侯正民  飾  張廷玉
寧暁志  飾  孫嘉淦
倪 土  飾  白献龍 
劉仲元  飾  顧琮
 
 
職員表
出品人  高建民、程蔚東、崔屹平
制作人  何欣、譚湘江
監 制  趙化勇、斯鑫良
原 著  高鋒
導 演  呉子牛
編 劇  高鋒
撮 影  楊尉
音 楽  趙季平
美 術  靳喜武