江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

慶余年 その7 原作ちらっと・・・

慶余年 原作もちらっと

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 去年「慶余年」を大陸公開時にリアタイしていて、なんじゃこの大結局!と阿鼻叫喚した挙句に原作にまで手を出してしまいました。その間に「山河令」の原作「天涯客」とかをさっさとクリアしたのですが、こちらはなかなか進まなかった。何しろ長いんですよ、この原作。

 全部で7巻なんですけど、第1巻39章、第2巻65章、第3巻49章、第4巻99章と膨れ上がり、ここまでがほぼドラマ第1季の分になります。
 なお、第5巻は153章、第6巻は178章、第7巻は161章におまけが一つとか・・・もう頭くらくらして、どこまで続けられるかどうか全く自信がない・・・そりゃそうでしょ。

 で、日本版のファーストランも終わったところで、原作を覗いて気の付いたところをちらっと。毎度のことですが、間違っていたらごめんです。

 

 ドラマはほぼ原作と同じ展開に作ってあるんですが、物語の組み立てが華やかでエンターテインメントとしての見せ場がたくさんになっています。

 例えば、ドラマでは范閑と皇帝一家が何度も顔を合わせています。原作じゃ范閑は皇帝や太子たちと顔を合わせたのはそれぞれ一度か二度。「兄弟3人で」などという必見な恐怖の食事シーンなんかもまったくないです。

 逆に北斉との戦後処理の交渉場面はドラマのようなコケティッシュなものではなく、徹底した情報戦と政治的駆け引きになっています。辛其物もできる太子派の一員です。

 

 范閑がこの時代にやってきた理由が原作では単純に過去の記憶を持った転生ですが、タイムスリップものに規制が入ったドラマでは大学生范閑が書いている小説の中の話と一ひねりしてあります。

 そのためにドラマでは原作にない場面、特に范閑の母葉軽眉にまつわる部分が大量に挿入されています。

 

 登場人物の背景や設定はほぼ原作準拠ですが、滕梓荆は出てきません。いや、彼に当たるキャラ范家の護衛藤子京という人はいるんですが、あそこで命を落として、范閑に大きな影響を与えたりはしていません。

 

 彼を取り巻く女性たち林婉儿、司理理、海棠朵朵は、もっと距離が近くなっています。

 妹の范若若、敵対する長公主らはほぼそのまま。范閑を育てた澹州の祖母は実は皇帝の乳母だったという経歴があります。なるほどあの貫禄はそこからくるのかと納得。

 

 ストーリ展開は基本は同じ流れでも、いくつか大きく違っています。ただ、この先第2季が出てくるとそこで補充される可能性もないとは言えないのですが、なんかさらに原作との違いが大きくなりそうな気がしてます。

 

 ここまでで一番目立ったのは、あの夜宴での活躍から言冰雲と肖恩・司理理の交換に北斉に出発するまでの間に、范閑は科挙の担当となって不正を暴いていますし、林婉儿と無事結婚して別邸でイチャイチャしまくっているあたりでしょうか。科挙の件で失脚したのが郭保坤の父ですが、その後郭保坤が范閑に復讐しようと北斉について来るというような話は全くありません。

 言冰雲が登場するのはやはり同じタイミングですが、彼の話題はもっとたくさん出てきます。高官の前途有望な公子が気の毒に死んだことにされて、スパイの親玉とか同情もされてますが、彼のもたらす情報が北斉との戦後処理や范閑が行う捕虜交換にも大いに役立っているとか有能な諜報員であることも示されています。

 ただ、彼と范閑が同じ年齢であるとかいう話、というより皇帝や陳萍萍が長年にわたって肖恩をひっかけた計略そのものが出てきません。第一、言冰雲は范閑上京時点ですでに4年前に北斉に潜入しています。

 救出後の彼と范閑の関係は、ドラマのようにフラットなものではなく、監察院の提司である范閑と言冰雲との関係はまずは上司と配下の関係です。

 

 ドラマ第1季はとんでもない場面で終わりましたが、そういう事件は何も起こらずに范閑一行は慶国に戻っています。となると、ドラマのこの先はまずます原作とは違っていくように感じていますが、この慶余年に限ってはそれに不安を感じていません。

 原作者の猫腻には申し訳ないけど、私にはドラマの方がずっとおもしろいんです。

 

 林婉儿の幼名が「林依晨」だった!とか上杉虎は「上杉」が姓だったとか、原作では始終范閑が「きれいな顔」「颯爽としたイケメン」「見たこともない美形」とか褒められていて笑えるとか言う小ネタはいっぱい仕込みましたが、メリハリのある展開、軽妙洒脱な会話と演技とかドラマならではの部分が大きくて楽しいのです。

 

 原作とドラマが違う展開をしても、許容できるレベルから「二度とあんたの制作したドラマは見たくない」レベルまでいろいろです。「鎮魂」のような話の展開は許容できないレベルに改編されててもそれを挽回するだけの演技が見られたので「これもいい」となってるレアケースもあれば、原作通りなのにどうしようもないあれこれもあるわけで・・・

 その点、この「慶余年」は改編したところに「外れ」がないんです。皇帝と范閑のやりとりの面白さとか、長公主との陰険なやり取りとか、楽しい王啓年と高達コンビとかおじさんたちの楽しい釣り場面なんかまったく原作にはないわけですが、ドラマはそういう部分抜きには考えられない。

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 もちろん原作ならではの突っ込んだ表現とか范閑の華麗な女性関係とかという部分はあるのですが、私にはドラマの方がおもしろい。

 

 というわけで、この先の約500章に突っ込んでいく自信はないのですw

 原作の現時点ではあんなことにはなっていない范閑と言冰雲のその後とか、原作では父を処刑されてしまった郭保坤が姿を見せていませんが、北斉に残ったドラマの彼はこれからどうするんでしょうね。とかいろいろドラマの展開が気になってかなわないので、さっさと第2季作って見せてほしいものです。 

 しかし、原作で強調される范閑17歳になってない、林婉儿16歳になってない、范思轍13歳になってないという年齢設定を頭に刻み込まれてドラマ見ると、それだけで笑えてしまうというおまけがついてきてしまったのは想定外でしたw