江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

天下長河 その2

10~19集

 

 この秋の中華ドラマ視聴ライフ、硬派な作品と軽めの作品をほぼ同じテンポで交互に視聴できるってほんと充実しています。

 靳輔と陳潢が康煕帝から直々の命を受けて、嬉々として黄河の測量を行う場面から、いよいよ本格的に工事に取り組み始めたという今回視聴分。


 康煕は靳輔を河道総督に任命,工事だけでなく治水に関わる全権を与え、言動が危なっかしい陳潢は官位を与えず幕僚として同行させることにする。これには当然不満な朝廷の面々、地元の両江総督阿席熙は生意気な靳輔たちが目障り。工事や土地を追われることになる民への補償金のために康煕が無理無理やりくりした金を私して、靳輔たちにはのらりくらりと言い訳をしてびた一文渡さない。

 朝廷に予算がないのは、同時進行で行われている呉三桂ら三潘との戦争のためですが、やがてこの戦争が終結。これで予算が回ってくると喜ぶ靳輔たちですが、康煕たちは次は台湾だとまた戦争の準備を始めています。

 

 靳輔たちの動きとこういう史実に基づくドラマの流れに並行して、描かれる周辺の人々のドラマがまたおもしろい。
 
 科挙では明暗を分けた陳潢、高士奇と徐乾学の三人。探花に選ばれ栄耀栄華は思い通り?とも思えた徐乾学は索額图と明珠の間に挟まれ、どちらの人間でもありませんと言いながら、索額图に操られて殺人までしてしまう。
 才知を誇った高士奇は、それだけでは朝廷に食い込めないことを思い知って、プライドをかなぐり捨て、こちらは索額图と明珠の間をうまく泳いで、康煕の側近に納まってしまいました。

 

 両江総督阿席熙と河道総督靳輔の間のトラブルを治めようと朝廷が派遣した欽差が徐乾学、彼だけでは心もとないと自ら皇帝に申し出てやってきた高士奇。徐乾学は卑屈で自分の意見を持てない人物になっていて、高士奇や陳潢を失望させる。高士奇は靳輔たちと計らって、阿席熙の元から金をとりもどすことに成功する。しかし、阿席熙を叩きのめしておいて、救いの手を差し伸べるとか朝廷や権力での処世術に磨きがかかっている。その彼を思惑を見抜いている康煕も、皇帝としてやっかいな重臣たちを操る高いスキルを持っています。

 

 康煕の祖母である孝庄太皇太后、嫡母孝恵章皇后、祖母の意を受けて冊立した皇后、民珠の娘で大阿哥の母恵妃と康煕周辺の女性たちも後宮ドラマのような猛々しい感じはなく、政治家であったり、皇帝から相手にされない哀しい皇后であったりとそれぞれのドラマを持っています。

 対立しあう索額图と明珠ですが、ある意味では息がぴったり。そこに新たに高士奇が加わりましたが、科挙には合格していない高官の存在が喜ばれないのはもちろんです。

 台湾の話と共に登場してきた施琅、なにか「鹿鼎記」と同じ調子なんですが、そういう人だったんですかね?
 伝令だけで終わってしまった三潘平定話より台湾話の圧の方が強い気がしますが・・・まあ史実です。


 それにしても、怖いもの知らずで皇帝にも遠慮なくずけずけものを言い、官僚組織の慣例だの礼儀だの知るものかという陳潢。彼を見てると「鎌倉殿の13人」バージョンの源義経が思い出されてならない。

 

 黄河治水はまだこれからが本番。ここまでの話は朝廷でも予算、工事現場でも予算、庶民も高官たちも金がない、それなのに私腹を肥やしている地方官やら高官たちとまさに金が主役のドラマが展開。

 

 索額图と明珠をはじめとした政治家たち、そこにとにかく黄河!という靳輔、陳潢や現場の官吏たちにとにかく私服を肥やすのと自分の面子だけにこだわってる官僚たちと強烈な顔ぶれがそろっています。それぞれキャラ立ちしてドラマを進めていきますが、ばらついた感じがしないのは彼らすべての上に立っている康煕のキャラが強く打ち出されているからでしょうか。

 羅晋の康煕は、皇帝としての威厳も若者の野望も十分、清濁を併せて吞みつつ自分の政治を推し進めていこうという強い意志を持っている人物として描かれています。
 朝廟での臣下たちとの駆け引きとかに相当きついコミカルなやり取りも入れてくるのに、浮ついた感じがしないし、かといって重苦しくもならないところは脚本の力だと思います。

 

 もう一つの見どころになっているのは義兄弟と誓い合った徐乾学、高士奇、陳潢の三人。共に科挙に臨んだ時からそれぞれに違う道を進みだしています。権力者に翻弄され、大望も自己肯定感も失った徐乾学、要領よく立ち回って順調に権力を手にしていく高士奇、変わりなく黄河の治水にかける陳潢と三人三様のこれからが楽しみです。