江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

大宋少年志

1~42集(大結局)

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 今年の初夏のあたりに「長安十二時辰」「九州縹緲録」等の話題の大型ドラマが目白押しの時期に配信されてたんですが、特に興味を引く話も聞こえてこなかったし、気にかかる演員が出ているとかでもなく、放置してたところに「割とおもしろい」「評価サイトのポイントも高い」という話が聞こえてきて、ならば!と視聴開始。


 結論から言っちゃうと、ほんとに意外に硬派なドラマ展開でおもしろかったです。


 主人公たちがこんな制服着てお勉強してるので、また恋バナ絡めて学園推理ドラマかと高をくくって見始めたんですが、これが大外れ。

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 お馴染みの仁宗時代の北宋の外交関係を舞台にした諜報ものという方がこのドラマにはふさわしい感じ。そこに、兄弟関係、親子関係、恋愛関係を絡め、なぞ解きをしつつ若者たちの自立と成長を描いています。
 若者たちがそれぞれの事情を抱え、あるものは自ら望んで、あるものは致し方なく、陸観年の率いる秘閣に集まってくるところから話が始まりました。ここは表向きは学校っぽいが、実は能力の高い若者たちを集めたスパイ組織的な存在。

 

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 まずは主人公の元仲辛。彼の兄伯鳍は宋の将軍だが、祁川寨の戦いで全軍壊滅の中一人生き残ったことで西夏と通じているのではないかという疑惑を持たれている。元仲辛は元家の本家から排斥されている庶子だが、兄の保護のもとで育ち、兄弟は互いを大切にしている。彼は兄を助けるためにと秘閣入りを承諾する。
 この元仲辛、江湖に通じた目から鼻に抜ける人物で小魚児を彷彿とさせます。でも、基本真面目なキャラ。

 

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 男主人公2の王寛は元仲辛の友人だが、性格はまるで反対。無駄口はたたかず物静かな麒麟児と呼ばれる優雅な儒学を学ぶ公子。博覧強記で腕も立つ。とはいうもののこの彼、絶対嘘は言わないと自らを律しているが、元仲辛たちがでっち上げを言っているときには「黙っている」という融通も利かせるし、元仲辛が持ち込んだ女性用下着もちゃんと調べているし、鍵を開ける技もちゃっかり身に着けている。こちらは宋のために役立つならと承諾。

 

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 女主人公の趙簡は女だって自分のことは自分で決めて、自分の力で名を挙げて見せると宣言。それだけの実力も十分にある。彼女は趙王の娘で郡主なんですが、前の方ではそんな感じはなく、秘閣の一員として有能な女性が性差別に負けまいと戦っている姿を見せています。この趙簡と元仲辛がけんかしながらも、互いにひかれていくというのはお約束のストーリ展開。だけど、ねばつかないし、恋愛がメインではないので、安心してみていられました。それでは満足できない方もいられるかもしれないけど、私には十分。

 

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 もうひとりの女性裴景は渤海王家につながる背景を持ち、この身分は利用できると秘閣に入れられたものの、自分は何もできないと劣等感を抱いている。彼女は王寛と出会い、彼に認められることで自己肯定感を育てていく。

 

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 薛映は兵部に隷属する軍戸の両親のもとに生まれたが、軍戸の身分を脱することができるよう秘閣で大手柄を立てようと考えている。武術の達人。

 

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 韋衙内は開封の高官の息子で、調子のいい遊び人公子。金と父親の権威をかさにやりたい放題。男女共学というので呼ばれてもいないのに秘閣入りを決めた。彼は父親が抱えていた秘密を知り驚愕するが、それにはさらに裏があって・・・こういう経験を積むことで、彼は大きく成長していきます。

 ただの遊び人で特技は「金遣い」だと見えた韋衙内が、父親があえて汚名を着て地下に潜って以来、その「腐敗高官」の息子であるということを利用していくあたりなかなかでした。
 秘閣の七斎に集ったこの六人が遼、西夏との謀略戦に巻き込まれていきます。


 まずは元仲辛の兄元伯鳍が生き残った祁川寨の戦い、これに宋軍が大敗したのは誰かが裏切ったからのではないか、なら裏切り者は誰だ?という謎が提示されます。ドラマのテーマは一本なんですが、次々に話が異なる様相を見せてくるので、最後まであきさせません。
 怪しいと思った人間が、やっぱり~だったり、いや実はだったり、またまたやっぱりだったりと局面と共に次々「正体」が変わっていくのとか、主人公たちが新しい個性を育てていくのを見るのが楽しみでした。


 このドラマのモデルとなった時代は、遼や西夏との和睦がなって北宋が繁栄を享受している時代です。西夏と宋との戦争を再発させようとする勢力と、なんとか現在の安定を維持したいと望む七斎の若者たちとの知力を尽くした戦いが続きます。


 最初にイメージしてた軽佻浮薄な学園ミステリの色彩は薄く、最初から最後まである種の緊張感が続くドラマ展開でした。


 郡主という高い身分にあっても男尊女卑の時代に生きる趙簡の鬱屈とか、自分には何の能力もないと自己肯定感を持てない裴景、富二代の韋衙内の精神的自立とか現代的なテーマも入っていて、ただ国を守れというだけでないところが悪くなかったです。

 若者たちに対する年長者組の方もただ若い者を利用しようとする高官、若い者たちにスパイなんぞさせず陽光の下に出してやれという老高官とか、若い者と権力争いをする王族とか、娘が好きな人物なら地位が低くても結婚を認めるという王族とかこちらも現代の価値観につながっている感じがします。


 それがうまくいかない時も多いのですが、このドラマではそんなに違和感なくストーリに溶け込んでいます。

 最初の方で提示された謎も、途中であれはどうなった?と気になった点も大結局までに無事解決。脚本も演員の顔ぶれ同様に派手さはないけれど、手堅くまとめているんじゃないでしょうか。私はこういう展開、十分楽しく見られました。


 残念ながら、このドラマも「第2季」に引っ張るエンディングになってますが、今回のエピソードの結末はきちんとついていますので、暴れなくても済みそうです。


 アクションで印象に残ったのは、このドラマで「強い人」はそんなに動かないんです。弱い方がひたすら突っかかっていって、ちょいちょいとよけられてしまう。強いもの同士なら・・・というのはまあ普通かな?


 演員と職員です。

 著名な演員がいるわけでもないですが、「これから」の若手ががんばってます。ちなみに私が知ってたの二人だけ。趙簡が「相愛穿梭千年」で影月を演じてた周雨彤というのはわかった。でも、王寛の王佑碩は「芸汐伝」で林思意の相手役してたはずなんだけど、記憶に残ってない。というか、途中で放り出したままでそこまできっちり見てない。 私があんまり現代ものを見てないせいもあるんで、彼らのファンがいらしたら申し訳ない。 主人公グループの6人、それぞれ違ったキャラ設定で、それにふさわしい配役がされてたと思います。これからたくさん見るようになるの期待してましょう。

 

追記:このドラマ、配信開始当時にすごく話題になったのを忘れていました。あと数回で大結局というところまできて、突如配信中止になったあの「封神榜」の後釜として、突如配信が始まって「なんで、これ?」とネット中に?があふれてたんでした。

ぶっちゃけあれよりはずっとおもしろかったから、私的には大歓迎でしたw(あれも一応5集ばかりは見た)しかし、あれ、どうしちゃったんでしょうね~


演員      角色  配音

张新成  飾  元仲辛  原音

周雨彤  飾  赵 简  徐佳琦

郑 伟  飾  薛 映  原音

王佑硕  飾  王 宽  原音

禾浩辰  飾  韦衙内  彭尧

苏晓彤  飾  裴 景  帅南

佟 凡  飾  陆观年  汤水雨

高梓淇  飾  元伯鳍  魏超

闫 肃  飾  丁 二  赵震

刘美含  飾  云 霓  刘晴

隋咏良  飾  梁 竹  张原铭

卢庆辉  飾  韩断章

職員

出品人  吕焕斌、龚宇、何瑾、蔡剑

制作人  张勇、王晓晖、王硕、周恩、李开宇、罗志刚

監 制  张华立、丁诚、蔡怀军、彭国元、钟益帆、陈潇、杨蓓、周雄、宋点、黄菲飞導 演  伊峥 

編 劇  王倦、吴峥、李喆、黄剑东、潘晓晨

美術設計 陈鑫