江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

御賜小件作 その1

1~12集

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 Twitterで一部話題になっていたドラマです。低予算、有名俳優も豪華な衣装やセットも目に入らないし、テーマ的にも派手さはない作品です。なのに評価サイトでのポイントはとても高い。どれどれ~と覗いてみました。

 うん、確かにこれは見る価値がある!と納得しました。

 

 主人公の楚楚が件作、つまり検視官的な仕事、になろうと黔州から長安にやってくるところからドラマが始まりました。早速大理寺少卿の景翊や三つの法機関を統括する安郡王蕭瑾瑜と知り合い、事件に巻き込まれていきます。

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 このドラマ、時代は中唐の宣帝のころ。この宣帝というのは「櫃中美人」で周渝民が演じた文帝の次の次の代になります。文帝というのは宦官に擁立されて皇位につき、宦官によって幽閉され死んだという人物。今度の宣帝も同じく宦官によって権力の座についてものの宦官勢力の削減に成功するなどある程度の成果を上げた人物。そういう時代に、三法司を一手に握る蕭瑾瑜は宦官たちにとっても、朝廷の重臣たちにとっても厄介な存在です。

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 圧倒的な推理力で事件を解決していく蕭瑾瑜が件作の募集をしたところにやってきたのが楚楚。彼女の能力を認めて検死に当たらせますが、彼が楚楚を屋敷に住まわせ、採用試験の結果保留中という名目で引き留めているのにはもう一つ理由がある。彼女が持っていた玉牌が、彼の手元にある父親の形見の片割れで、なぜそれを彼女が持っているかという謎。蕭瑾瑜の母は西平公主、駙馬の蕭恒が父ですが、ずっと行方不明で死んだものと思われています。

 そして、この玉牌に気が付いているのは宮中を牛耳る宦官の秦鸞も同様。

 気が付かないうちに楚楚は宮中の権力争いに巻き込まれています。

 

 父が生きていると確信した蕭瑾瑜は景翊、冷月そして楚楚を連れて黔州へやってきます。

 黔州刺史李璋のところには景翊に安郡王を名乗らせて、自分は楚楚の祖父楚平の家に泊まり込み。

 このあたり件作を家業としてきた楚家の一族が、他の人たちから蔑視されてきた話が盛り込まれています。楚楚自身も自分の持ち物や金銭を他の人間が嫌がらないかと気にしています。楚家の人たちも泊めてくれという蕭瑾瑜たちが件作の家ということにこだわらないことを喜んでいます。こういう死にまつわるケガレ意識というのは日本でも深刻な差別の原因の一つとされていますが、これを真正面からドラマの中で取り上げているのは記憶にないです。

 また、反派の宦官秦鸞が自分は宦官だから差別されているという意識を強烈にもっていて、私室で髭を張り付けている姿には、ただ哀れを感じるだけではない、彼のここまでの人生を考えずにはいられませんでした。

 そして、主人公は実は楚平たちがこっそり連れ帰ってきた棺の中で死んだ母から生まれた子どもであったということが明らかにされます。当然役所に知られたら大ごとなのです。しかし、そういう状況で生まれた子が親元で歓迎されるはずもない、それではかわいそうだとずっと本人にも黙ってきた一族。

 

 探案ドラマとしては、腕利きの検死官楚楚、抜群の推理力を誇る安郡王蕭瑾瑜、彼と共に育ってきて現在は最良の協力者である景翊、もう一人の幼馴染で優れた武芸を持つ冷月、安郡王の護衛呉江たちで構成する捜査チームが活躍。同時に楚楚と蕭瑾瑜のロマンスも進行しそうです。

 個々の事件の背景に大きな企みが隠されているというのは中華ミステリにはよくあるパタンですが、今回もそういう方向のようです。

 黔州で進んでいる贋金作り、宦官勢力を削減しようとする皇帝の計略、宮廷の高官たちそれぞれの思惑、宦官たちの暗躍とこれからに向けてたくさんのミステリ要素が出てきています。

 

 主役陣もあまりなじみのある人はいないのですが、キャラと配役がよくマッチしている感じで悪くないです。主役の楚楚を演じる蘇暁彤は、「大宋少年志」で自己肯定感の低い渤海の公主を演じてましたが、今回は逆に自分の技術には大きな自信を持っています。

 蕭瑾瑜の王子奇、景翊の楊廷東、冷月の趙尭珂とそれぞれ数本のドラマに出ているそうですが、私はすべて未見か覚えがないキャラでした。

 

 今回のドラマ、けたたましいキャラがいないのが私にはとっても好ましいです。息子が安郡王に巻き込まれて危険な目にあったりしないかと常に目を光らせている感じの景翊の母あたりにそっち方面の危険を感じないでもないですが、まあ出番少ないし・・・許容範囲。

 同じようなパタンで楚楚に当たるキャラが理不尽にけたたましく登場するドラマはいやというほど見てきたんで新鮮でもあります。

 いろいろ先の展開が楽しみな作品です。