江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

九義人 その1

1~10集

 

 「雲之羽」の大結局に思考停止している間に、こちらの視聴開始。
 いやあ、驚きました。何というドラマ、作るんだと思いましたね。これ、現地で見るのと日本でと絶対受け止めが違うと思います。日本でもぜひ出してもらって、皆さんの受け止めを聞かせてほしいです。

 

 話は烟雨綉楼という刺繡工房で起こった7年前の事件と、被害者の友人たちが7年後にその結末をつけるために動くという二つの時間でのドラマが交互に語られる構成になっています。

 

 まず、この7年前の事件。烟雨綉楼の楼主呉廉は腕のいいことで知られ、経営する烟雨綉楼には女弟子たちが住み込みで修業をしている。彼女たちのあこがれの存在でもある呉廉は、実はとんでもない性犯罪者だった・・・

 彼は、烟雨綉楼内に住み込んでいる彼女たちを次々と毒牙にかけ、自分の性癖を満足させてきた。中には無理やり性行為を強制されたものもいれば、愛されているのはお前だけと甘い口説き文句に騙されて彼を受け入れたものもいる。そんな女性たちの中の一人が自殺し、騙されてきたことを知った藺如蘭は友人孟苑の止めるのを押し切って、知府に訴え出る。

 

 とにかくこの呉廉がどれだけ下司かと言うと自分が凌辱した女性たちのベッドのシーツを麻に換える、他の娘たちのシーツは絹ものなのに・・・これに気づいたのは自分も被害者の一人である孟苑ですが、彼女は呉廉を訴えるには、きちんと準備が必要とがむしゃらな藺如蘭の行動を心配している。

 

 彼女の心配は的中し、寧国公夫人を後ろ盾に、知府までも味方にした呉廉は次々と藺如蘭をおいつめていく。凌辱されたと訴えれば、誘惑されたからだ、でも確かにそういうこと関係は結んだので妾にすると言い出し、ふしだらな弟子に寛容な善人イメージを演出、一方で藺如蘭が淫蕩で次々男たちを誘惑しているという噂を流す。藺如蘭が何をしても、彼と寧国公夫人の意を受けたものたちがすべて黒白をひっくり返し、彼女がどうしようもない淫乱な毒婦であると言いつのる。

 役所では「取り調べ」の名目で、男たちの見えるところで服を脱がされ、体を調べさせられかける。
 彼女の実家は商売を閉じ、兄は老師から破門され、毎日噂にのせられた住民たちがおしかけ罵りの言葉を浴びせかける。

 呉廉の暴行にも増して、セカンドレイプが彼女を追いつめていく。

 

 こういう7年前の出来事がそのうち頂点に達して、藺如蘭は自死を遂げることになるはず・・・

 

 そして、1集ずつ交代で描かれるのが7年後の話。徐公の妾から正妻に昇格した孟苑は、時が来たと復讐計画を実行に移し始めます。

 

 彼女に味方するのは、7年前に藺如蘭の訴訟を手助けしたために、泥棒の濡れ衣を着せられ、片足を砕かれて7年間牢に入れられていた捕頭であった劉薪や藺如蘭に命を助けられた馮大、捕頭たちの暴行から彼女を救った沈牧たちです。

 7年後には、孟苑が着々と呉廉や寧国公夫人を追いつめていく経過が描かれています。

 

 つまり、1集おきに藺如蘭が自死へと追い込まれていく暗澹とした話と、孟苑たちが呉廉たちを追い込んでいく痛快なドラマが来るわけです。

 

 この構成は絶妙です。単に時間系列で話をすすめたら、全24集の前半は辛く胸の悪くなるような話が続くことになるはず。少なくとも私はそういうの我慢できない、きっと最初の方でもう視聴を放棄していたはずです。

 

 このドラマの権力と結びついた著名な経営者が自分の経営する工房の中に弟子たちを住まわせ、次々と立場を利用して性犯罪を続けるという反派の設定、今の日本であの芸能事務所を連想するなというのが無理です。

 ドラマを見ているとどうしても、某芸能事務所の元社長が呉廉にダブってくるんです。このドラマを最後まで見ればきっとすっきりとした形で呉廉達の決着がつくんだと思っていますが、現実での今後の動きからも目を離さないことが大事ですね。

 

 「説英雄誰是英雄」とか「嫣語賦」とか、女性が闇落ちするツールとして性的暴行を扱っているドラマにもやもやし続けていましたが、そのもやもやを一挙に吹き飛ばしてくれました。このドラマは真正面から、性的虐待を取り上げ、そのむごたらしさを暴き出し、加害者たちはもちろんそれにのせられて被害者を追いつめる民衆の愚かさ、おそろしさも見せつけてきます。

 7年後の復讐劇の主役となる孟苑は、梅長蘇的な策士で、呉廉達の周囲がどんどん埋め立てられていきます。沈牧は不正取引の罪で呉廉らを捉えようとしますが、孟苑はそれでは7年前に死んだ藺如蘭や多くの被害女性たちの恨みは晴れないと、あくまでも烟雨綉楼で彼が行ってきた性的虐待を暴こうとしています。

 何しろ、7年経っても彼はまだ烟雨綉楼の学生たちを餌食にし続けているのです・・・

 というとんでもないセクハラパワハラ男を演じているのが喬振宇。「七剣下天山」とか可愛い弟キャラが多かった彼が、成長して悪役も演じるようになってきてましたが、今回はまたすごい反派ぶりです。表見は見栄えが良い人格者の公子だけど裏は真っ黒けというのは「古剣奇譚」の欧陽少恭とも被りますが、今回は桁が違います。

 孟苑は呉倩、劉捕頭には李佳航、藺如蘭には胡意旋という配役、7年後でもあまり年月の経過を感じられないのには苦笑していますが、濃い役づくりというか演技をする面々です。

 二つの時間軸がつながるのは、大結局近くなんでしょうか?まだ、藺如蘭の死の経緯とか孟苑が徐家の妾となった経緯なんかもまだこれからです。
 それにしてもこのドラマ、一日に1集だけ見ると精神衛生に悪いので、一日おきに2集まとめて見ないとしんどいんですよね~でも、見ないではいられない💦