江湖迷人

Yahooブログから引っ越してきた武侠迷のブログです。中華ドラマの古装劇、ミステリ、SF方面を主に取り上げて、感想文を書き連ねてます。ネタバレはしたくはないんですが、ばらし放題になってることも、逆に肝心なことを抜かして何のことかわからないこともあって、あまりあてにはならないので、ご用心ください。

刺馬vs投名状

リアル?


イメージ 1 なんといえばいいんだろ。うまく書けないんだけど、新しくて、人物描写もしっかりしてて、お金もかけて、一流のスタッフと李连杰、刘德华、金城武といった人気俳優が現代の技術を駆使して制作した「投名状 the Warlords」
 対して、すでに30年以上前のショウブラ作品「刺馬 the Blood Brothers」。背景はおきまり、特撮も平板、脚本も単純、当時のトップスターを配しただろう俳優陣もいまとなっては姜大衛と狄龍以外私にはよくしらない人・・・

 という状況なのに、見終わってみると、「刺馬」のほうがおもしろかった・・・
 もっとも、「刺馬」は日本語訳付きで見て、「投名状」は中国語字幕で見たという違いは、私の決定的に不十分な中国語理解力からして、絶対にあるけど。

 もともと実際に清末期に起こった馬新貽殺人事件を題材にしてできたのが、「刺馬」でそれをまたもとにしたのが「投名状」というわけだから、登場人物の名前は変わっても、話の骨格は同じ。
 山賊だか追剥だかをしていた二人の義兄弟と兄嫁、そこに割り込む大哥(馬新貽)。3人で手下を率いて大活躍、大哥の出世、二嫂との不倫、それに気づく三弟、大哥の二哥殺し、三弟の報復大哥殺し(これが刺す馬ってわけ)、三弟の死・・・・大枠は一緒なんですよね。

「刺馬」だと、二嫂と大哥の不貞を知って悩むのは三弟で、あとの二人はわが道をまっすぐ。
つまり、初めから、名誉欲も物欲も十分な大哥は、ひたすら立身出世に努める。腕は立つものの物事を深く考えない二哥は、あっさりだまし討ちにあう。
 でも「投名状」の二哥は、食糧不足のなか、ずっと苦楽を共にしてきた仲間と投降させた城民たちの間で悩む。大哥は清朝の貴族たちに翻弄され、弟の妻に惚れてしまい、これも悩む。

 やたらリアルで、薄汚れた「投名状」の人物造型。わたしも、江湖にはまっていらいけっこうたくさん辮髪を見たけど、こんなきたないのは初めて見たってくらい、「さかやき」伸び放題の汚い辮髪だった。
 対して、「さかやき」をそらないオールバックプラス三つ編みの香港映画特製の辮髪。もうこれは、お約束の世界なわけで、それを「偽もの」と言ったって仕方無い。
 現代的な価値観を持ち込み、悩める青年像を作り上げた投名状がけっして面白くないわけではなんだけど。ひたすらにリアルを追求した結果、なんかかえって嘘っぽくなっちゃったって感じ。人間の物欲とか権力欲、それに男女の情をストレートに取り上げ、人間の醜さをむきつけにした「刺馬」のほうが、私には、かえってリアルに感じられておもしろかった。

 この二つの間に、姜大衛が今度は馬新貽を演じた92年版のテレビ版「刺馬」もあるそうで、ちょっと興味のあるところです。
 ところで、「投名状」って、もう日本語版でてましたっけ?