子不語:夜行郎
ただ今、「九義人」の大結局を控えて、まとめて一気に見ようとその周辺から必死で目を逸らしているところです。7年前の話の進み方は十分検討がつくだけに、途中で「続きはまた明後日!」とか言われたら、たまらんですから。
ということで、この1週間ばかりは映画を中心に見ていました。有名なの無名なの、大予算に低予算、豪華明星に「明日の」明星、古装劇に現代劇とまあ手あたり次第・・・見て面白いと思えるのは、予算や評判、明星の有無じゃないよな~と毎度同じ感想を持つのですが・・・この「子不語:夜行郎」なかなかの見ごたえでした。
清代の志怪小説を原作にした網劇です。
出だしのとっても怪奇っぽい雰囲気に、そっち系の映画を期待して視聴スタートしたんですが、ちょっとニュアンスが違いました。この映画、善人面した権力者によって煽られた民衆が何の罪もない女性を火あぶりにしてしまうという話がそもそものところにあります。新婚の妻をそうやって殺されて、助けることもできなかった夫の陸离が妖怪退治を専門とする「夜行郎」になって孤独に生きています。「他们只管捉妖,不问人事,一生孤独,一生贫苦,一生流浪」という夜行郎は技を修業するだけでなく、心を捨て去ることが必要なので、妻を亡くして以来、抜け殻のようになった夫は淡々と妖怪を退治しています。
その夫が、再び妻を死に追いやった三郎という人物に再開、そこに妻の無念が詰まった石から現れた妻そっくりの妖青石とか金めあての下司で邪悪な夜行郎横須とかが出てきて、話が進みます。
妖であるというだけで、どれだけ善行を積んでいても殺すのが夜行郎の仕事なのですが、それが揺らぎだす主人公。
この邪悪な「善人」と殺された妻、7年後に仇を打つ夫という構図、「九義人」にそっくりなんですよね。
見ていて、あれっと思いましたが、清代の小説がベースであれば、特に関係はなさそうです。それにしても、どちらの作品も、もちろん悪辣な権力者が悪いのですが、それ以上に煽られた民衆のむごさ、おそろしさを抉り出すような描き方がされているのが印象的です。人間だから善、妖怪だから悪とか、調子に乗ってるんじゃないぞ!、善悪を決めるのはそんなことじゃない!というテーマもしっかり伝わってきますが、難しい顔して見なきゃいけないような作りにはなっていません。
網劇とか低予算の作品によく見られるように、脇に李明、舒耀瑄というベテランをゲストで招いているけど、主演はまだまだ無名の若手です。
映像方面は、最近のことですから、低予算でもCGはそんなにひどいというものではないですし、景気な雰囲気も十分に出しています。
撮影中にロケ地が災害に見舞われるなど、もともと予算の少ない中、大変な苦労をして完成させた映画ということです。そうやって完成させただけの価値は十分にあったと思います。きっちり楽しませてもらいました。
演 員 角色
孙启恒 飾 陸离
廉 赛 飾 三郎
李 明 飾 师傅白髯
舒耀瑄
王一一 飾 陆离娘子 / 青石
丁立饰 飾 横须
顾婉靖 飾 白衣女子
导 演 许飞青
编 剧 尚金哲、许飞青
制片人 萨支磊